あの日以来、痴漢の被害はぴったりと止まった。
雅美の感覚では数人はいた筈だ、なのにどうして………。
良からぬ想像が独り歩きする。
あのエロガキは有力者の息子で、力を利用していたのか……だとすれば合点がいかないこともない。
だとすれば後ろ盾は何者なのか。
あの女性たちは皆、弱みを握られた被害者だったのではないか………それにしてはエロガキに協力的過ぎた。
旨味があって協力していたのか……それはお金か……それともあの精力の強さ?…あるいは、その両方?……吐き気が起きそうになる。
見た目はアイドル顔負けのルックスだが、鼻持ちがならないあのエロガキは一つだけ事実を告げていた。
………………無精子症。
雅美は密かに知り合いの女医に連絡をし、徹底的に検査をしてもらった。
本来は膣内に残留する精液など検査はしないというが、無理を聞いてもらったのだ。
結果はあのエロガキの言う通りだったのだ。
多くは酸性に保たれる膣内で精子は生きられないが、その存在は確認出来るはずなのだ。
なのに、見当たらなかったのだ。
彼女が言うのには、居たとしても子宮に辿り着けなかった精子は問題がないと。
これだけ見当たらないとなると十中八九、無精子症だとして間違いはないらしい。
性病の類も検出されなかった。
性交の痕跡だけでは証明が難しく、証拠と目撃者が期待できないとなると、お手上げだった。
………ふぅ~困ったはね……
雅美はスケジュール表を゙見て、溜息をついた。
宣伝を兼ねた取材は、これまでにもあった。
今回はラジオ番組の生放送のオファーが来たのだ。
メディアの露出はあまり好きではない雅美だが、上層部がすでに受けてしまっていては仕方がない。
公開放送だと聞いて、今から気が重かった。
緊張して放送局に1時間前に着いてしまった。
打ち合わせも余裕を持って、済ませることが出来た。
そこでスタッフの気になる話があった。
スポンサーの意向でちょっと変わったセットになっているという。
ラジオ放送なのに?と思ってスタッフに聞いてみたのだが、スポンサーは明かせないというのだ。
これも先方の意向らしいが、誰もが知る放送局の番組だからそれ以上は深掘りをしなかった。
収録曲プースに入るとガラス電話仕切られた向こうにスタッフ達の姿が見える、思っていたよりも広い空間的だった。
窓の外には早くも立ち止まって、こちらを見る人の姿が見える。
その窓に対して斜めに配置された机というのか、それが置かれている。
重厚感のある家具のようにラジオDJ達と距離があり、下を見ると仕切りもされており、左右と向こう側が見えない不思議な造りになっていた。
ーーーそれでは10秒前………3、2、1………
オープニングテーマ局が流れ、DJの軽快なトークで番組が始まった。
数分のトークの後に、曲が流された。
いよいよ企業名と雅美の名前が紹介され、トークが始まった。
女性の下着とは、その歴史、開発の苦労など話は様々な方向に進む。
DJの工な話術荷助けられ、いつの間にか雅美は饒舌に口を開いていた。
我が社の話なのだ、一般の人が分からない苦労や下着選びのポイントなど、喋りたいことはいくらでもある。
不意に足元で小さな音がした気がした。
さり気なく椅子を可能な限り後ろに引いて、足元を見た。
信じられなくて、もう一度だけ、見た。
間違いなく人がいる。
若い男…………あの電車内での、望まぬ情事を思い出さないわけにはいかなかった。
ーーーそうなんですね…我々男性には、見えない世界ではありますが、トレンドはどういったことなんでしょう
口が勝手に喋っていた。
………はい…服と同じで時代と共に変化していきます……例えば……
雅美は録音した音声を流すように口を動かしながら、スカートから引き抜かれようとするショーツを必死に阻止していたが、指先からその感覚が消えるのを感じていた。
ーーーなるほど…ファッション制だけではなくて、機能制も格段に向上しているんですね……開発にまつわる苦労は………
ラジオDJの声が聞こえても、膝を開こうとしてくるエロガキとの攻防が続いていた。
それもラジオDJの問いかけに考えを巡らさなくてはならなくなった場面で、隙が生まれてしまった。
閉じた膝の間に身体を入れられ、閉じられなくなった。
もともと椅子には深く腰掛けない習慣も、相手に味方した。
生温かい舌が、割れ目を掻き分けて上下に動いていた。
ーーーう〜ん、奥が深いんですね…
………そうなんです…だから…んっ…えっと…素材はとても………大事……なんです
下では割れ目を上下に走る舌が、ねちねちと蠢いていた。
大きな家具のようなテーブルの上で組んだ両手に力が入り、白くなる。
やがて、クリトリスを唇に含んで、舌先で優しく叩き始める。
ーーーそれではここで一曲、リクエストに応えてお送りします
トークが一旦途切れて曲が流れる間、スタッフが入ってきて、あれこれとこれからの流れを手短に話す。
雅美は表情が崩れないように、注意を払った。
さすがに感じさせ過ぎてはいけないと思ったのか………いや、中途半端に感じさせて楽しんでいるに違いない。
その先に進んではいけない……ある意味もっと欲しい……でもそれは容認できない………でも……
……あぁ…あぁ…………あぁ……あっあっんっ…あぁ……
切なくて、やるせなくて、もどかしい。
身体が暑かった。
ーーーそれではここで、3曲連続で曲をお送りします
ラジオDJの音声が切られると、軽食が持ち込まれた。短時間で口に入れられるサンドイッチだ。
その間にトイレを済ませるようにと言われていた雅美は、席を立った。
何か対策を考えなければならない。
トイレに入って考えたが、これと言って思いつかないのが悔しかった。
時間を考えたらもう戻らなければならない。
ブースに戻る廊下を急ぎ歩いていたら、ホスターが貼られているのが目についた。
特に、四隅に光る画びょうに………。
雅美が戻ると、さっきまでは無かったマッサージチェアのような、無駄に大きい椅子にて交換されているではないか。
ーーーこっちのほうに替えて置きました……時間が長いですから、上からの指示です……楽ですよ
スタッフのADがそう言って去っていった。
なぜか座面だけ色が違うことが気になったが、もうタイムアップだった。
これなら深く座れば逃れられる、雅美はそう思った。
座ってから何かがおかしいと思ったが、放送が始まっていた。
ーーーさあ、ここからは下着メーカーからお越しになった○○さんに、改めてお話を聞いていきましょう……
ラジオDJの軽快な話の最中、座面の下の違和感に、雅美は気づいてしまった。
人が入っている、と。
それは、あいつしかいないだろうということも。
どこまでも執拗で、雅美は恐怖を覚えた。
座面の表皮がずれていく。
スカートの下も、ずらされた。
疑いようのないペニスの感触が、陰部に触れている。
絶望を感じながら、苦痛に備えた。
入口を圧迫され、押し入って来た。
微妙なピストンが始まる。
…トンットンットンットンットンットンッ……
子宮の入口が小刻みにノックされる。
それほど気にならなかったことも続けられていると、身体が反応を始めて来てしまった。
微細なうねりが小さな波となり、落ち込みの無い刺激となって恐れていた快感を生み始めた。
あまりにも深く突き刺さっている。
オーガズムには届かないが、それがかえって苦しみになった。
いや……やめて…きもちいいから…あぁきもちいい…
ポルチオが圧迫され、Gスポットが常に摩擦を受ける。
三段階で言えば、二段階目を維持された宙ぶらりんな快感が苦しくて、苦しくて……堪らない。
雅美の腰を両手で掴むエロガキの手が、汗ばむ。
背もたれの中で、くぐもった声が雅美にだけ聞こえていた。
…いや…そんな声をださないで……やめて……
雅美には男の喘ぎ声は脳を刺激するスパイスになり、興奮を煽るものになる。
一度だけ結合部を見た。
ペニスの根元が見えては埋まり、その動きに連動して快感を改めて自覚して堪らなくなった。
上半身に影響がない程度に、雅美は微妙に腰を動かし始めた。
1段階上がった快感に、もう抑制は難しいことを悟った。
その時、エロガキの射精を膣の奥に覚えた。
………あぁ………そんな………
ドクドクと脈打つように精液画像吐き出されている感触が、手に取るように分かった。
後のことはあまりよく覚えてはいない。
滞りなく終わったことだけは分かった。
椅子から立ち上がる際、エロガキが用意していたハンカチが見えた。
素早くそれを使って情けなく萎えたペニスの上に捨て置き、エロガキが片手に握りしめるショーツを回収した。
すると座面の表皮を自分で戻す滑稽な゙場面を、見ることが出来た。
雅美はそれを冷たく見やり、ブースを後にするしかなかった………。
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