男の異様な視線にいまだ気づいていないのか、単に物怖じしない性格なのか、女はひらひらと舞うように、何があるわけでもない部屋の設備を事細かに紹介し続けている。
「ユニットバスではありますが、お風呂もしっかり付いているんですよ。この立地で5万円台でバストイレ付きとなると、かなりお得だと思いますよ」
そう熱弁する女の言葉も、男の耳にはほとんど入っていなかった。
彼は、女が身振り手振りで動くたびに、追従してゆっさゆっさと揺れる胸だけを凝視している。
ふたりがいま立っている場所は手狭な洗面台の前。賃貸物件にありがちな、水回りをひとまとめに追いやった部屋の隅の空間だ。
女は、自分が薄暗い袋小路に追い詰められているとは夢にも思っていないようだ。
男がじりじりと身体を近づけてきていることにさえ、気づいていなかった。
警戒されぬようゆっくりと時間をかけながら、ついに、男の手が柔らかい太ももにそっと触れた。
「……あっ?」
これにはさすがの女もほんの一瞬だけ、警戒の表情を浮かべたものの、男が申し訳なさげに視線を落としているのを見て、事故だと判断したようだった。
「あぁ、ぶつかっちゃいましたね……。申し訳ありません、ここ、どうしても狭くなっていますからね。いま退きますね」
そう言いながら身をよじって男の横をすり抜けようとする彼女を、男が逃すはずもなく、さらにぐいぐいと追い詰めていく。
「え、ちょ……っ?……お、お客様?」
身体を密着させ、後ろから抱きつくようにして腕をまわしていく。太ももや脇腹に手を這わせ、柔らかい肉を揉みしだきながら、女を壁際に押さえつける。
「ちょ、ちょっと……!?離してください!やめてください!ちょ、なにをするんですか!!」
女の抵抗を意にも介さぬまま、男の指先が上着の中に滑り込んでゆく。
「うおぉ……マジでっけ……」
硬いブラジャーの上からでも、はち切れんばかりの乳房の重みが手のひらに伝わってくる。
「あ、あの……ほんとにやめてください……それ以上さわらないで……今やめてくれたら誰にも言いませんから……」
用意のいいことに、女がつけていたブラジャーはフロントホックだった。
一思いに金具を外してやる。その瞬間、暴力的なまでの肉が圧力から解き放たれる衝撃が手に伝わってきた。
「やめてください……見ないで……お願いします……見ないで……!」
力なくじたばたする女の腕を押さえこみながら、思いきり上着をたくし上げる。
眼前の曇った鏡に映し出されたその威容に、男は思わず息を呑んだ。
「すっげ……」
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