人の少ない映画館・・・俺はネットで調べた『映画の見やすい席』に座った。
そのせいだろう・・・彼女の右側にも客が座った。
もしかしたらイチャイチャできるかも?
そんな風に期待していた俺は、彼女の右側に座った革ジャンの男を 少し恨めしく思った。
優花は「少し寒いね」といって、コートを布団のようにして体にかけた。
俺はそんなに感じなかったが、その仕草が可愛くて微笑んだ。
館内の照明が、ゆっくりと落ちていく。
暗くなっていく中で、優花の目が移動するのにつられてスクリーンを見た。
ハリウッドの派手なアクションの映画の広告・・・まるで傑作だと確信しているかのような『感動』『感動』『感動』と煽る邦画の広告・・・ドロボウへの注意・・・
いつもの退屈な時間に、チラッと彼女の方を見た。
彼女は、今から始まる映画の期待にうっとりと微笑んでいた。
布団のように首までコートを被っている。
その下で手を結んでいるのか、少しモゾモゾと動いていた。
大きな音楽が鳴り、俺はまたスクリーンを見る。
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