「じゃ、時間になったし もう始めようか」
そんな気の抜けた号令と共に会議室の電気が消され、退屈でマンネリな定例会議がスタートした。
モニターの電源が入り、あまり意味があるとは思えない資料が表示されていく。
俺は開発部に所属していて、営業部の報告など関係ないのに年に数回求められる説明のために参加させられている。
そんなだから会議が始まった直後から、俺はいつもの観察を開始した。
観察の対象は伊東美咲という事務の派遣社員だ。
モニターに資料を表示させるためのパソコンの操作要因として、会議室の最前列のテーブルに こちらを向いて座っている。
歳はまだ30手前だろうか、透明感のある美人だ。
真面目で 少し気が弱そうな雰囲気がある。
そんな女性が社内一と言っていいほど悪名高い課長の隣に座っているのだから気になるのは当然だろう。
なんせ課長が嫌われている理由は容姿や性格ももちろんあるが、何人もの女性がゲスなセクハラ被害を受けているのだ。
だから一部の女性社員には恨まれているといっていいほど嫌われている。
会議の手伝いも、おそらく席が課長の隣だという理由で参加者がおらず、派遣社員である彼女が押し付けられたのだろう。
課長は、その評判を裏切る事はなかった。
暗くて確信が持てるまで時間がかかったが、そうとしか思えない動きをしている。
背中に手をまわして尻を撫でるだけじゃなく、おそらく太もも触っている。
いや、そこまでするとは思えないが、もしかしたら股間を弄っているのではと思う動きさえしている。
観察を始めたころは純粋に彼女を心配していた。
けれどパソコンのモニターの弱い光に照らされた彼女の表情に気づいた時から、自分の中で彼女を観察する目的が変わっていった。
確かに触られている。
けれど恥ずかしいのか逃げることもできない。
唇を噛み必死に耐える姿は、巨大な力に怯える小さな動物のように見えた。
時折、体がピクッと跳ねている。
その表情は絶望しているようにも、興奮に恍惚としているようにも見える。
どうしてかは分からないが、言い知れない興奮を感じる自分がいた。
俺は彼女が気になっていき、社内で見かけるたびに その姿を目で追うようになっていった。
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