千紗が愚息をシゴく音、男が彼女の体を弄ぶ音、そしてわずかな2人の声はバスの走行音にかき消され、誰も助けにきてはくれなかった。
『くうっ、、出すぞっ、』
こみ上げてきた射精感に、男は千紗の手を退けて立ち上がり、下半身を彼女の方に突き出す姿勢になった。
次の瞬間、彼の小さな愚息から千紗のアイマスクに向かって勢いよく精液が放たれた。アイマスクに付いた多量の精液はドロリと垂れ、彼女の頬や鼻にまで及んだ。
男は発射口に精液が付いたままの汚れた愚息をズボンにしまうと、『ありがとよ』とただ一言だけを発し千紗の肩をポンと叩いて席を離れていった。
千紗は初めて精液の臭いを嗅いだ。
ましてや恋人ではなく顔も分からない男のそれは吐き気がするほどの悪臭に感じられ何度も嗚咽した。
しばらくの間、千紗はアイマスクすら外せぬままに俯いてすすり泣き、このバスに乗ってしまったことを後悔していた。
どれほどか経ち、なんとか落ち着きを取り戻した千紗は、精液がこびり付いたアイマスクをようやく外し、嫌悪感からそれを床に投げ捨てた。
顔に垂れた精液をティッシュで何度も何度も拭った。しかし何度拭いてもその独特なオスの臭いを消し去ることができなかった。
千紗はひとり静かに涙を流しながら、わずかに開いたカーテンの隙間から瞬きもせず夜の暗闇をただ眺めていた。
つづく
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