バスはその後も高速道路をひた走る。
およそ半分ほどの距離まで来ただろうか。
今のところ大きな渋滞にも巻き込まれず、空いた道路を順調に飛ばしていた。
道路を明るく照らすオレンジ色の照明がカーテン越しに一定のリズムで流れて行く。
そのとき、
暗い車内で大きな人影が動き、最後尾へと向かっていった。このバスに車内トイレは備え付けられていないはずだ。
運転に集中している運転士はこれにまったく気付いていない。
通路いっぱいの横幅をもったその人影は、車内中程に座っていた乗客の男だった。彼は揺れる車内をのそりのそりと歩き、千紗の座る最後尾に迫っていく。通路灯がぼんやりと彼のその足元を照らしている。
ついに最後尾にたどり着いた彼は、ぐっすりと眠る彼女の隣にどっしりと腰を下ろした。彼の重さで座席がギシりと軋み、眠る千紗の体が揺れる
男の口元には陰湿な笑みが浮かび、その鼻息の荒さが彼の興奮具合を表していた。
つづく
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