発車したばかりの車内はまだ照明が点いている。
彼女は旅慣れた感じで、旅行バッグの中からアイマスクとネックピローを取り出し、手際よく寝支度をし始めた。
息で膨らませたネックピローを首にセットし、可愛らしいキャラクターのアイマスを目元に付けた。
が、彼女は慌ててアイマスクをめくり、スマホを取り出して目的地で待つ彼氏に予定通りのバスに乗車したことを連絡した。
「今バスに乗ったよぉ!明日会えるね、楽しみ(о´∀`о)」
約6時間後、目が覚める頃には大好きな彼の待つ目的地に到着する。
...はずだった。
千紗が寝入る直前、運転士が車内アナウンスを通じて何か言っている。
眠りに落ちる寸前だった彼女だったが、なんとかその雑音混じりの声に耳を傾けた。どうやら高速道路が閉鎖されているとのことだった。
《この先の高速道が事故により閉鎖されているとの情報が入ってまいりました。しばらくは一般道を走行してまいりますため、目的地到着が大幅に遅れることが見込まれます。お客様にはたいへんご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解頂けますようお願いいたします》
千紗はまったくツイてなんていなかった。むしろ最悪だ。
彼女はさっき出発を告げたばかりの彼氏にこの状況を連絡した。
「もう最悪!( *`ω´) 事故で高速閉鎖だって..到着遅れるかも、ごめんね(つД`)」
彼女は不機嫌そうに口を尖らせながらアイマスクを付け直し眠りについた。
つづく
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