私が、男の胸にもたれかかりながら、ボーッとそんなことを考えていると、電車が大きな駅に到着し、車内の半分近くの乗客が降りた。
車内がギュウギュウ詰めでなくなれば、さすがの痴漢男も密着している訳にはいかなくなり、私から身体を離した。
私はそのスキに、男の横をすり抜け、電車を降りた。
そこはまだ、私が降りるはずの駅ではなかったが、とにかくトイレに行って、お尻の半分程までずり下ろされたパンツを何とかしたかった。
私がエスカレーターの長い列に並ぶと、後ろに並んだ人が、左手で私の左手首を掴んで来た。
ゆっくりと振り向くと、それはなんと、さっきの痴漢男だった。
『電車の外までついてくるなんて、なんて大胆なんだろう?』
私は呆気に取られたが、ここで騒ぎ立てて、手を振りほどくなどしたら、騒ぎになって駅員が飛んでくるかも知れない。
私にとって、電車で痴漢されることは不快ではない。まして、この男のような、女の身体の扱いに馴れた、テクニックのある男なら、歓迎すべき相手だった。
しかし何より辛いのは、時分にそういう性癖があることを周囲に知られ、好奇の目で見られることだった。
痴漢の愛撫を受け入れ、快感を得ていたことなど、誰にも知られなくない。かといって、一方的に被害に遭っていたかのような演技もできない。(やろうと思えばできたかも知れないが、そんな事で自分を偽るのは嫌だった。)
結局私は、男が何をしようとしても、騒ぎにならないよう大人しく従うしかなかったのだ。
エスカレーターを昇りきると、男は一度手を離したが、今度は私の横に並んで歩き、右手で左手首を掴むと、私の手を引いてどこかへ連れて行こうとする。
私は男のするままに、着いていった。
男は、駅の多目的トイレの前で足を止めた。
男は私の方を見ずに
「先に中に入って。5分したらドアを開けて」
と、小声で言った。
私が個室に入ってしまえば、男には手が出せなくなるし、中には緊急時に駅員を呼ぶ装置もあるはずだ。
だが、この男は私がけしてそんなことはしない、と確信しているようだった。
それが少し、癪に触った。
しかし、結局私は、男の言う通りにしてしまったのだ。
一人でトイレに入って「閉」のボタンを押し、とりあえずグチョグチョになったアソコをティッシュで拭き、パンツをはき直すと、5分経つのを待って、「開」のボタンを押した。
一呼吸置いてから、男が入ってくる。
はた目には、用を足し終えた人がトイレから出て、入れ替わりに次の人が入ったようにしか見えなかっただろう。
男は「閉」のボタンを押してドアをロックすると、無言で私の足元に跪き、スカートに手を突っ込んでパンツを足首まで一気に下ろした。
この男がこのあと、気持ちいいことをしてくれることは分かっていたし、密室で他人に知られる心配もなかったので、私もこの時は抵抗しなかった。
しかし男は、前面の壁を指差し、
「ここに手を突いて」
と言った。
「えっ?」
「そこに手を突いて、お尻をこっちに突き出して」
男が録らせようとしているポーズは、立ちバックだ。ということは、その通りの体位になれば、すぐ後ろから挿入される。
「そんな…嫌です。それだけは…」
私が首を横に振ると、
「処女なんて、大事に取っといても重たいだけでしょ?さあ、早く!」
確かに、男の言う通りだった。
私の中で、愛する人とのロマンチックな初体験、などという幻想は、とっくに消え失せていた。
セックスによって得られる、オナニーや痴漢の指技とは次元が違うという快感にも興味があった。
でも、だからと言って、こんな場所で、見知らぬ男としてしまっていいものだろうか?
私は混乱していた。
私がイヤイヤをするだけで、いつまでも動かないので、男が私の両手首を掴み、壁まで誘導した。
手が壁につくと、男は私の後ろに回り、両手で腰骨のあたりを掴んで手前に引っ張る。
私の背中と腰が徐々に落ちて行き、そのポーズに近づいて行くが、私は口で
「やっ!いやです!やめて…」
と言うだけで、身体は男のなすがままになっていた。
私が、完全にお尻を突き出したポーズになると、男はスカートを大きくまくりあげ、しばらくは膣穴の位置や角度を確認するように、アソコを弄っていたが、やがて
「脚を開いて!」
と私に命じた。
こんな体制にまでなって、いまさら逆らっても仕方ないので、私はおずおずと、脚を広げた。
「来る!」
そう思った瞬間、男の太くて堅いものが膣口に宛がわれ、次の瞬間、焼けるような激しい痛みが私を襲った。
「いたーい!やだ!抜いてください!やーっ!」
処女を奪われる悲しさなどではなく、単純に、予想を上回る痛さに、私はパニックになった。
「騒がないで!駅員が来ちゃうぞ。こんな所見られたくないでしょ?」
私はそのひとことで、ぞっとした。
ここは確かに個室だが、基本的には身障者のトイレ。騒げば外に音がもれ、不審におもった駅員が解錠するかもしれない。
それは、私が最も恐れる事態だった。
かといって、いくら哀願しても、この男が挿入を止めてくれるとも思えない。
※元投稿はこちら >>