【03】
その日から香奈は、毎日のように自慰行為をするようになった。
オナニーがいやらしくはしたなく汚らしい行為だという気持ちや、オナニー
の後に感じる背徳感はあったもののその快感を止める事は出来ず、翌日にな
ればまた悶々としてくるのだった。
香奈は自分でも認めていた。自分が他人よりも性欲がある事を。
学校の水泳の授業では男子の体が気になり、自分のパソコンでする事と言え
ばアダルトサイトを網羅する事が殆どだった。
しかし引っ込み思案で口数も少なくどちらかといえば地味な香奈が人一倍ス
ケベな女だとは、廻りの友人達や家族ですら想像できなかった。
そんな香奈が変態的行為に興味を持ち始めるキッカケとなった事件が起こっ
た。
放課後、卓球部の練習が終わり着替えをすませた香奈は部活の仲間である由
美と紗耶香と三人で帰路についた。
時刻は7時をまわった頃。
季節は秋から冬に変わろうとする時期。あたりはもう暗くなっていた。
三人は先輩の悪口や今晩のドラマについて談笑しながら自転車をこいだ。
口数の少ない香奈は機関銃のように喋る由美に相槌を打ちながらも、その傍
らでまったく別の話をしてくる紗耶香の話も聞かねばならず二人の会話の内
容などてんで頭に入らないのだが、その状況が面白く笑顔で二人をかわりば
んこに見ていた。
おもむろに紗耶香が自転車を止めた。
香奈も由美もつられて自転車を止めた。
紗耶香が香奈をジーッと見つめている。
「え?なに?どうしたの?」
香奈は不思議な顔をして紗耶香に聞いた。
「ねぇ、香奈笑って。」
紗耶香が真顔で言うので香奈はなんだか可笑しくなって、ホントに笑いなが
ら
「えぇ~?変だよ紗耶香ぁ。」
と紗耶香に笑顔を見せた。
「あんたって・・実は可愛いかったんだ・・・。」
紗耶香は真顔で香奈を見つめて呟いた。
「な!?なに言ってるの!?紗耶香の方が百倍可愛いよ!アタシなんてなん
かオタクっぽいとか言われるし紗耶香はキレイな顔でなんか胸もおっきいし
目がきれいでそれから・・・!!!!?」
可愛いと言われた事の無い香奈は頭に血が上り、普段の口数少ない大人しい
香奈とは思えないくらい大きな声で身振り手振りを加えまくしたてた。
はっと我にかえり紗耶香を見た。街灯に照らされた紗耶香の顔はホントに綺
麗だった。長いまつげに大きな目、小さな顔。
紗耶香はジッと香奈を見つめていた。
「あの~、アタシもいるんですけどぉ?二人の世界に入らないでくれませぇ
ん。」
ぶっきらぼうに由美が言った。
その言葉に紗耶香も香奈も何故だか可笑しくなって大笑いしてしまった。
暫く笑った後、紗耶香の顔を見るとお互い恥ずかしくなってまともに顔をあ
わせられなくなった。
「帰ろうよぉ~。」
由美は一人仲間はずれにされたような気持ちになり先に自転車をこぎ出し
た。紗耶香も香奈もすぐに後を続いた。
『なんだか変なカンジ。紗耶香・・なんか変な雰囲気でドキドキしたよ。で
も・・なんだか楽しい。』
そう思い香奈はニヤけながら2人の後を無言で自転車をこいだ。
市街地を抜けて薄暗い国道の歩道を3人は無言で自転車を走らせていた。
前方の街灯の下に車が停まっているのが見える。
車道を時折通る車のヘッドライトが停まっている車を鮮明に映し出した。
人影が見えるどうやら運転手が乗っているようだ。きっと電話か何かしてい
るのだろう。
その車の通り過ぎる時、チラリと中を見た。
「えっ!?」
運転手の右手が動いているのが見えた。
右手は股間から突き出た棒を握っている。
棒の先端は街灯の明かりに照らされたテカテカと光っていた。
一瞬。一瞬だったが確かにそう見えた。
香奈は振り返りその車の後ろ姿を見た。
『え!?アレってアレ?見間違い?でもアソコに手があったし・・え?ウ
ソ?変質者?』
香奈は後ろを何度も振り返りながらさっきの光景を思いだそうとしたが、ほ
んの一瞬の出来事だった為、そのシーンを鮮明に思い出す事は出来なかっ
た。
香奈は紗耶香と由美にさっきの事を知らせようと思い声をかけようとした
が、『なんか雰囲気が気まずいし・・・それに・・・なんて言えばいいの?
車のなかで男の人がオチンチン握ってたなんて口に出せないよ!』
結局、香奈はその光景を2人に伝えないまま別れた。
もし見間違えじゃなかったら香奈はあの車の中で男が何をしていたかを知っ
ていた。
家に着いた香奈は着替えながら考えた。
『あれ絶対オナニーしてた・・・。見たんだ。間違いないよ。あんなとこで
しなくったって・・・でも・・・初めて見た。』
何故だかドキドキしてきた。
香奈はその夜もオナニーして二度の絶頂を迎えてそのまま眠ってしまった。
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