【32】
「おお~い!岡本~!」
香奈が練習を終え部室に帰っていた時、グラウンドの方から声がした。
その声を聞いた時、香奈の胸は大きく高鳴った。
香奈は慌てて声の方へ振り向くと、グラウンドの方から1人の男子が走って
来ていた。
待ち望んだ瞬間。
褐色の肌に笑みを浮かべ、たくましい足を大きく踏み込みながら走ってくる
一人の男子。
その声の主は香奈の前まで走ってくると、息を切らした様子もなく眩しい笑
みを浮かべながら香奈を見つめて言った。
「やっと出てきたんだ!どうしたんだよ、ずっと休んでさ。心配してたんだ
ぜ!」
その力強い眼差しと、全てを包み込むような笑顔を見た時、香奈の目に涙が
溢れてきた。
「ゴメン・・・ごめんね・・あたし・・なんで・・涙なんか・・ごめん
ね・・中村君・・・。」
香奈は言葉が出てこず、ただ中村の顔を見つめながらそう呟いた。
出来る事なら今すぐにでも中村の胸に飛び込みたい。
その腕で抱き締めて欲しい。
そう願うけれども、それは出来ない。
中村にとって自分はただのクラスメートでしかない。
香奈はこみ上げてくる衝動を必死で抑えながらも、涙は止まらず、困ったよ
うな顔をする中村から目を逸らすことが出来なかった。
「ちょ・・おい・・どうしたんだよ!?なんで泣くんだよ!?」
目の前の中村は、どうしていいかわからずあたふたしている。
「ごめん!なんか・・久し振りに会ったんで・・嬉しくて・・。」
香奈は目をこすりながらにっこりと笑みを浮かべて言った。
「・・岡本・・・。」
中村は、その言葉の意味を何となく理解したのか、驚いた表情で香奈を見
た。
香奈は、自分の発した素直な言葉が中村に伝わってしまった事に気付き、慌
てて喋り出した。
「あ!あのね!久し振りに学校のみんなと会ってね!休んでた時は寂しかっ
たから・・それで・・なんか・・涙でちゃって!」
「なんだよ。驚かすなよ。ドキドキしたじゃねえかよぉ。」
「ほんと・・ゴメン。びっくりさせちゃったね。」
「びっくりって言うか、俺はてっきり・・・あ・・いや・・何でもないよ。
て言うか、岡本って実は寂しがりや?」
「え?・・あ・・そうそう・・そうなの!」
香奈は自分の気持ちを悟られないようにごまかしたが、心の中では気付いて
欲しかった。
『なんでごまかすのよ・・・。はっきり言えば良いじゃん!中村君に会えた
から嬉しくて涙が出たんだって!・・・どうして言えないのよ・・。』
心の中で自分を叱り飛ばしてみるが、やはり素直に言葉に出す勇気が出な
い。
「良かったよ、岡本が学校に出てきてさ。住田も喜ぶよ。アイツさ、オマエ
が休んでる間、ずっと元気なかったんだぜ?からかってもさ、全然のってこ
ないしさ。よっぽどお前の事好きなんだよ。」
中村の言った言葉が、香奈の胸に鈍い痛みを与えた。
『違うよ・・そんな事聞きたいんじゃないよ。あたしが好きなのは中村君だ
よ・・他の人の話なんてしないでよ・・。』
しきりに住田の事を話すということは、自分を恋愛の対象として見ていない
事を表しているように思えて寂しさを感じた。
「ところでさ・・小出は?まだ・・来てない?」
言いにくそうに聞く中村の顔は寂しそうだった。
それは香奈が好きな表情のひとつ。
切なげで、寂しい眼差しを浮かべる悲しい笑顔。
香奈は、この表情を浮かべる中村が大好きだが、同時に香奈をひどく傷つけ
る。
中村がこの表情を浮かべる時、中村の心は紗耶香を思っている。
香奈の心にどす黒い粘り着くような暗闇が静かに広がってきた。
その暗闇は、だんだんと香奈の心を覆っていく。
「・・来てないよ。」
香奈は無表情に答えた。
「そう・・。どうしたんだろ。岡本は知らない?」
またあの表情。
どうして?
そんな顔しないで!
紗耶香の事聞かないで!
あたしを見てよ!
「・・知らない・・最近話してないの。」
香奈は中村から目を逸らし小さな声で答えた。
「ああ・・そう・・そうなんだ。あ!おれ片付け残ってるから!」
そう言うと中村はそそくさとグラウンドへ走っていった。
香奈は走り去る中村の後ろ姿を見つめながら胸が苦しくなるのを感じた。
その夜、ベッドに入った香奈は中村の事を思いながらゆっくりとパジャマと
下着を脱いだ。
右手で股間をさすりながら、左手で乳首をつまみ優しく愛撫する。
そして想像する。
中村から唇を吸われ、乳房を愛撫される。
固くなった突起を舌で転がされながら、陰部を指で優しく撫で上げられる。
中村の前で静かに足を広げ性器をさらけ出す自分。
広げた足の間に顔をうずめ自分の性器にむしゃぶりつく中村。
中村の股間はパンパンに膨れ上がり、ズボンの上からも形がわかってしまう
くらいに勃起している。
自分の裸を見て勃起する中村が愛しくなり、ベルトに手をかけ脱がせてい
く。
下着を下ろすと目の前にたくましいペニスが現れる。
そのぺニスの先端を舌先で刺激した後、ゆっくりと口に含み前後に動かす。
荒い息を吐き、喚起とも苦悶とも思える表情を浮かべる中村を見ながらペニ
スをくわえ、口の中で舌を這わせる。
急に中村は自分を押し倒すとはちきれんばかりに反り返り脈打つペニスを一
気に股間に突き立て激しく腰を振る。
香奈は右手でクリトリスを激しく擦りながら、左手の中指を膣の中に僅かに
出し入れしながら腰を振る。
頭の中が溶けてしまいそうなくらいの快感が香奈を襲う。
陰部からは止め処なく愛液が溢れ出しシーツを濡らしていく。
『中村くん!中村くん!中村くん!・・気持ちいい・・して・・あたし
に・・して・・ダメ・・イク・・おかしくなっちゃう・・イク・・なん
か・・くる・・出ちゃう!』
下腹部に熱いものを感じ、それは絶頂と共に陰部から吐き出された。
しばらく意識を無くし、グッタリとして余韻に浸っていた香奈はお尻の下が
冷たくなっていくのを感じ、起き上がると布団をはぐった。
『なに・・コレ・・もしかして・・これが・・。』
シーツに残された絶頂の後を見ながら香奈は、また股間が濡れていくのを感
じた・・。
※元投稿はこちら >>