不安に駆られる彼女に、俺はある事を提案をした。
「乙葉ちゃん…、お金なんだけどさ、俺に任せてくれないかな?」
そうメッセージを送ると、ドタドタと足音がして、玄関を閉める音、階段を降りてくる音が聞こえた。
チャイムが鳴る。
「あの…乙葉です…」
俺に任せて、と言う言葉に反応したのだろう。
「ああ…、ここじゃ他の人に見られるから、まず入って。」
俺は彼女と玄関で話した。
部屋に上げるのは時期尚早だからな。
「実はね、この金額だったら俺の手持ちで賄えるから…とりあえず立て替えようかと思ったんだけど…」
「えっ…、でもそんな事したら…」
「うん、確かに大変だけどね。でもそれ以外に方法はないんじゃないかと…」
「…」
悩んでいる。あとは親に相談する、とか言わないといいけど。
「でも…、私そんなお金返せないし…」
「そうだろうね…。でも金額を減額した分、支払い期限が短くなっちゃって…明後日なんだ。」
「明後日!?そんな…」
「だからさ、時間もないし、余計なお世話だろうけど、そうするしかないんじゃないかな…」
「でも…でも…」
「返すのはお金じゃなくてもいいよ。」
「えっ!…」
彼女の顔は一気に警戒する顔になった。お金でなければなんだろう…身体?変な事されるんじゃあ…そう思われるだろうな。
「学校の帰りにさ、少しだけおじさんの話し相手してくれないかな?」
「話し相手?」
「そう。おじさん一人だからさ、話し相手いないと将来ボケちゃいそうで。もちろんおじさんも仕事あるし、乙葉ちゃんだって遅くなる時もあるだろうし、勉強もしなきゃいけない。友達と予定もあるだろうから、来れる時でいいんだ。どうかな?」
彼女はしばらく考えている。
「…どれくらいですか?…」
「そうだなぁ、長くても1時間くらいかな?いくら同じアパートでも、他人のおじさんの家に長くいるのはマズイからね。」
「でも…」
「じゃあ、今夜一晩考えてみて。乙葉ちゃん、明日も今日くらいに帰れる?」
「えっ?あ、はい、たぶん…」
「じゃあ、一緒に銀行に行ってくれないかな?ちゃんと振り込むとこ、証拠として見てもらいたいんで。」
そう言って、次の日に銀行で待ち合わせをして、部屋に帰らせた。
彼女は俺からの提案も母親には言わないだろう。
次の日、約束した通り、彼女は学校帰りにまっすぐ銀行に来た。
それから俺の通帳を見せ、いくら入ってるか確認してもらった。一緒にATMに行き、振り込むところを見てもらった。
金額が画面に表示された時、彼女はブルブルッ…と震えたようだった。
そして振込のボタンを押した。
送金された残高を見せて、
「これで振り込んだよ、もう大丈夫。」
それを見て彼女は力が抜けたようになり、目に涙を貯めて今にも泣き出しそうだった。気が張っていたのだろう。
「おっと、待って待って!」そう言ってハンカチを渡した。
「ありがとうございます…ありがとう…」
俺に大金を使わせたと思って、謝っているのだろう。気にする事はないのに。
だって、振り込んだのは俺の別の口座なんだから。
彼女は金額にばかり目がいってて、振込先までよく見てなかったからな。
ようやく泣き止んだ彼女と一緒に帰った。お金の方は一応解決はした。
だが、交換条件の俺との約束に不安を感じているようだった。
「あの…昨日の話で…」
「ああ…俺の話し相手?いつでもいいよ。でさぁ、回数決めた方がいいのかな、って思うんだけど。」
「回数?」
「そう。一回一万円として、55万だから、55回相手してもらうの。7千円はおまけ。」
「一万円?でもそれじゃあ…」
「うん、割に合わないかもしれないけど、一回5000円だとちょっと大変でしょ?」
「うん…」
「じゃあそれで決まりね。気が向かなかったり、嫌だな、と思ったことあったら遠慮なく嫌だ、って言っていいからね。」
彼女は下を向いて返事をした。
「そのかわりね、1つだけお願いがあるんだ。必ず学校の帰りに来てほしい。」
「学校の帰り?」
「そう。一回家に帰ったらその日はお休み。学校帰りにまっすぐだよ?いい?」
彼女は、う〜ん、と考えてから
「わかりました…」と少し怯えながら答えた。
なんで学校帰りか?もちろん制服姿で、スカートから伸びる脚とハイソックスが見れるからだ。
アパートで別れ際、
「あの…本当に…ありがとうございました。」と深々と頭を下げてくれた。
本当にいい娘だ、この娘は。
彼女はいつ俺の部屋に来てくれるのだろう。まず1週間は来ないだろう。
そう思っていたが、あの日の2日後に連絡が来た。
「今日今からでいいなら行けます。」
意外に早かった。だが残念ながらもう仕事に出かけていた。
俺の仕事は月の半分が夜勤、もう半分が日勤と言う勤務体制だ。3日仕事して2日休む。だいたいそんな感じだ。
俺は約束を守ってくれたことを褒め、都合のいい日を教えた。
そして数日後の休みに、彼女は部屋にやって来た。
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