それ以来、俺と彼女は距離が近づいた気がする。
俺が駐車場に行くのと、彼女が登校する時に1人で居る時の、ほんの2、3分の間でいろんな話をした。
「乙葉ちゃん、今くらいだと期末試験じゃないの?
「はい、明日から。今回自信なくて…」
「昨日の音楽特番見てたけど、もうみんな同じ人に見えたよ笑」
「マジで!?笑全然違うよ〜」
いい感じだった。
問題はいつになったら、もう1つ踏み込めるかだ。
ところがある日、思いもよらぬ事が起こった。
俺はコンビニに行った帰り、公園のベンチに彼女を見かけた。
その姿は、なにか思い詰めているように見えた。
俺は公園に入り、彼女に声をかけた。
「こんにちは。今帰り?」
彼女は顔を上げ、
「…はい…」
と言って、また俯いてしまった。
「どうかしたの?」
「…」
せっかくいい感じになってきたのに、何があったのだろうか。
「なんかあった?元気ないけど…」
「…うん…」
「良かったらおじさんに教えてよ、力になれるかわからないけど。」
「…」
彼女は今にも泣きそうな顔してる。
「…乙葉ちゃん…、大丈夫?」
彼女が頷いた瞬間、涙が落ちた。
事情を聞いて、意外な答えに俺は驚いた。
意外にも彼女はアダルトサイトを覗いてしまい、高額請求されたことに悩んでいた。
なるほど。中学生くらいになるとある程度性に対して興味があるらしい。
最初は検索程度で、性に対する事を見ていたが、いろいろなところをクリックしていく度、いろんなサイトにアクセスしてしまったようで、最後にこのサイトに行き着いてしまったようだ。
俺にとっては、無垢な乙葉ちゃんがそんなものを見たことに、ちょっとがっかりはしたのだが。
どんなサイトか聞くと、彼女はスクショを見せてくれた。
俺は彼女からスマホを借り見てみた。
なるほど…このサイトのこのページを開くと、クリックしただけで自動的に請求される表示が出るようになっている。
金額は110万7千円となっている。
もちろん
「連絡ない場合は法的処置に移行します」
と書いてある。
いまだにこんなワンクリック詐欺みたいなのがあるのか…にしても、クリックしただけでこんな金額なんて…
こんなものは無視すれば何も起こらないのだが、まだ14歳の彼女にはそんな事は分からないのだろう。
そのままにしておいても全然問題ないよ、
そう言って彼女を安心させることができたのだが、俺はそうしなかった。
チャンス、と思ったからだ。
スマホの画面を見ながら、
「う〜ん…これは…まずいね…」
深刻な顔をしていると、彼女の顔も青ざめてきているのがわかった。
「これは…支払いしないと裁判とかになるかも…そして学校とか親にも…」
そうやって彼女の不安を煽った。
「どうしよう…こんなお金…どうしよう…」
彼女はボロボロ涙をこぼした。
隣に座り、ハンカチで涙を拭いて上げた。
「お母さんには…言えないよね?…」
コクン、と頷く。
うーん…、と悩む振りをする。
そして彼女に提案する。
「乙葉ちゃん…、これおじさんがなんとかしてあげるよ。」
えっ!?っという顔をして、彼女が顔を上げたほんの数ヶ月前に知り合った、ろくに身元も知らないおじさんがそう言う、誰もがそんな反応を示すだろう。
だが、彼女は他にすがるものがなかったようだ。
「ホントに…?おじさんがなんとかしてくれるの…?」
「ああ…でも確実じゃないかもだけどな…このサイトに交渉してみるよ。」
さっきまでボロボロと涙が落ちて、不安しかなかった彼女の目は、少しだけ期待と希望の眼差しに変わっていた。
「とりあえずこの画面、俺に送ってもらえるかな?ラインで。」
彼女躊躇することなく、ラインのIDを教えてくれた。
こうして俺は、彼女とラインのやり取りができるようになった。
一緒に家に帰る間、少し事情を聞いてみた。クラスの女子の間でもそういう話題になるらしい。中でも割とませている子がいるらしく、時々そういうサイトを見ている、との事だった。
彼女はそれが気になったが、なんてサイト?と聞くのが恥ずかしくて、自分で探して行き着いたのがこのサイトのようだった
「乙葉ちゃん…、そういうの興味あるの?
「……」
彼女は下を向き無言になった。否定しないのは図星なんだろう。耳まで顔を赤くしていた。
「恥ずかしい事じゃないよ。年頃なんだから当たり前だよ。おじさんが乙葉ちゃんくらいの時なんか…」
等といろいろ話をして、少し落ち着いた表情になった。
アパートの前に来ると俺は、
「じゃあ今から連絡してみるよ。この事はお母さんにも誰にも内緒だよ。」
自分からではなく、俺からそう言われて少し安心したのだろう。
「はい…お願いします…」
そう言って2階に上がっていった。
白いハイソックスを眺めながら、これからあの娘をどうやって俺のものにするか考えていた。
家に入ってまもなく、彼女が部屋の窓を開ける音がした。彼女の部屋は把握している。以前住んでいた娘を犯した時、最初に忍び込んだあの部屋だ。
俺はその真下の部屋の窓側に行き、アダルトサイトの業者に電話をするフリをした。
「はい…いや、それは…ただ開いただけでというのは…」等、いかにも交渉しているように、それが難航しているように自演してみた。案の定気になるのか、彼女が窓側に来て聞き耳を立てているのがわかった。
しばらく電話をするフリをしてから、一旦やめてみた。
少しすると、彼女からのラインの通知があった。
「こんにちは。乙葉です。」
こんな時にも丁寧に挨拶する。母子家庭なのにしつけが行き届いてるなぁ。
「電話してくれたんですよね?どうでしたか?」
「うん、いろいろ交渉してみて、減額にはなったよ。でもやっぱりね、お金は払わなくちゃいけないみたいだ」
「そうなんですか…いくらくらい…」
「なんとか55万7000円までは下げさせたんだけど、これ以上はどうにも…」
しばらく返信はなかった。おそらく減額したとは言え、金額を見て愕然としたのだろう。小さな胸は不安と恐怖で押しつぶされそうだろう。泣いているのかもしれない。
俺はまたメッセージを送った。
「乙葉ちゃん、大丈夫?」
「どうしよう…」
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