目隠しをしようと彼女の後ろに回る。
俺の視界には彼女の後頭部が入る。
愛くるしい耳、艶やかなうなじ、艶のある黒髪、全てが擦れておらず、愛おしく感じ、それだけで俺の欲情に火をつけるのには十分だった。
「どう?痛くない?」
目隠しをして彼女にそう問う。
「…うん…」
声が震えているのがわかる。
「怖くなったり、嫌になったらすぐやめるからね。ちゃんと言ってね。」
彼女はコクン、と頷いた。
俺は彼女から少し離れて正面に座った。
「じゃあ、いまどこにいる?」
「えっ?…私の前…」
「視線、感じる?」
彼女は、う〜ん、と言って首を傾げる。
俺は少し声のトーンを下げて、
「俺は乙葉ちゃんをじっと見てるよ…」
そう言った。
その瞬間、ピクッ、と身体が動いた。
意識したようだ。
そっと彼女の隣に移動し、さっきよりも距離を詰めて言う。
「今度は?俺は乙葉ちゃんの脚を見てるよ…」
実際、しっかりとハイソックスを履いている脚を見ていた。
彼女は慌ててスカートの裾で足を隠す。
その仕草さえも可愛らしい。
今度は彼女の真後ろだ。
「今度は乙葉ちゃんのお尻を見てるよ…」
それを聞いて、彼女は思わずお尻に手を回しながらこちらを向く。
そのタイミングで気づかれないように、また真後ろに移動した。
彼女の呼吸が少し荒くなっている。
もしかして、この状況に興奮している?
もしそうなら、俺の予定通りに事は進んでいるのだ。
俺がまた後ろに回ったことを気づいてはいない。今日は彼女がそう言うまでやめないつもりだ。
そうっと彼女の後頭部に顔を近づける。
彼女の香りはいいシャンプーを使っているのだろう、思わず思い切り吸い込みたくなるような香りだった。
中学生の匂いといえば、同級生の男子の汗臭い、下手すればワキガのような匂いしか記憶になかったからな。
そして耳元で、
「ここだよ…」と囁いた。
その瞬間の彼女の姿は今も鮮明に覚えている。
囁いた瞬間、
「はあぁっ…」と声を漏らした。
ポニーテールに髪を結び、目隠しをされている少女が、口を開けながら敏感に反応する姿。
これほど下半身を刺激してしまう要素はないだろう。
だが、彼女は意外な行動を取った。
囁きに反応するとこちらを向き、俺に抱きついてきた。
!!!
思わぬ彼女の行動に絶句した。
両腕をがっちり抱えられ、胸元に顔を押しつけてくる。それはほんの一瞬だったのだろう。だが俺には、何十分にも何時間にも匹敵するくらい長く感じた。
俺は腕を抱えられた状況だがなんとか手を彼女の身体に回し、抱きしめようとした。
「お、乙葉ちゃん…?ごめんね…怖かったかな?ちょっと調子に乗りすぎた…」
そう言うと彼女は、胸に顔を押し付けたまま首を振り、それからようやく俺から離れた。
しばらく2人とも無言だった。
感想を聞くまでもなかった。あれだけの反応をさせてしまっては。
なぜか俺は気まずい感じがしていたが、彼女もそうだろう。
不意に食らったとはいえ、思わずあんな喘ぎ声のような声を出したのだから。
もしかしたら、彼女の中の何かに火がついてしまったのかもしれない。
「乙葉ちゃん、怖かったかな…ごめんね」
彼女は首を振る。だが、顔は下を向いたままだ。
「おじさん…」彼女は小さな声で言った。
「おじさん…、前に言ったみたいに…乙葉の事、…好き?…」
意外だった。あんなに不安な目に遭ったのに、彼女の口から出た言葉に驚くしかなかった。
「うん…変わらないよ…乙葉ちゃんの事は好きだし、大事にしたいと思っている…」
彼女は俺が、彼女に恋をしているように思っているんだろうか?だとしたら、俺もそれを認めることになるのでは?
まぁ、違う意味で間違ってはいないのだが。
それを聞いて彼女は、
「…えっと…、なんでもない、帰ります。」
そう言ってそそくさと部屋を後にした。
俺は最近、いつも彼女が帰ったあとはもう来ないんじゃないか、そう思うようになってきた。
自分の親くらいの年齢の、大して素性も知らない同じアパートの住人の部屋で、アダルトビデオを見せられたり、コスプレを着せられたり、目隠しをされたり…
普通なら部屋に来なくなるどころか、通報されるレベルだ。
それでも彼女は来てくれた。
ある冬の寒い日、
「おじさん、これ…」と可愛い包装に包まれた物を渡された。
「うん?これ何?」
「今日渡したかったんだけど、おじさんいなかったから…バレンタイン…」
開けてみると、小さなアルミカップに入った色とりどりの飾りのついたチョコレートが並んでいる。
「ああ、昨日バレンタインか。おじさん、縁がないから忘れてたよ、ありがとう。」
彼女はコクンと頷いた。
俺は、彼女が何人かに渡す義理チョコだと思っていた。
「上手にできてるね。いっぱい作ったの?好きな人にもあげたの?」
そう言うと彼女は、
「あげてないよ…誰にも…」
「えっ、他の人にはあげなかったの?」
「…お母さんと…おじさんだけ…」
これは本命用のチョコレートなのか…
彼女も俺に好意を持っているのか?
「…あ、ありがとう…」
俺は初めてチョコレートをもらった中学生のような返事をしてしまった。
彼女の作ったチョコを食べる。材料買って、慣れない手つきでキッチンで奮闘する彼女を思い浮かべながら。
俺は例え相手が女子中学生であっても、いつ以来か分からないくらい、久しぶりに幸福感に包まれていた。
「やっぱり、彼女は大事にしなきゃな…」
そう思いながらも、まだ欲望の火は燻っていた。
そして春になり、彼女は3年生になった。
そして事態は急転したのだった。
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