俺は戸惑ったが、さっき怖い思いをした女子高生をそのまま放って置くわけにはいかない。渋々ながら送っていくことにした。
駐車場に着き、後部座席のドアを開けたが
「あの…私、車酔いしやすいんで、助手席はダメですか…?」と言ってきた。
誰かに見られたりしたら、と一瞬思ったが、「時間も時間だし、夜だから見えないだろう」そう考え直し、彼女を助手席に乗せ、車を走らせた。
車を出して、しばらくは沈黙の時間が流れていた。何か話を切り出そうとするが、何故か何も浮かんでこない。
すると彼女から、「あの、…このままちょっとだけドライブなんて…できないですか…」
「えっ、でも…もうこんな時間だし、遅くなるとお母さんとかが…」
「バイトの時はいつも遅いから、少しなら大丈夫なんです。私、本当のお父さんいないから、あんまりドライブとかしたことなくて…」
ああ、そういえば彼女は母子家庭だ、って娘に聞いたことがあった。
小学生になったあたりに両親は離婚したらしく、母親と姉の3人しかいないんだ、と
そんな事を思い出した俺は、「じゃあ…本当にちょっとだけ…」と返してしまった。
彼女は声を弾ませ嬉しそうに「はい!ありがとうございます!」と満面の笑みを見せた。
俺は繁華街を抜け、車を走らせた。
運転しながら、「もしかしたらこないだまでの行動、その意図が聞けるかも…」と考えていた。
だがその反面、また同じような事態になるかも、と不安もあった。
だが、無意識にそうなって欲しい、とも思っていたのかもしれない。
彼女は外を眺めていた。何気なく彼女の方を向いた。
制服のスカートから、色白で細い脚がのぞいている。
俺は思わず、目を背けてしまった。
俺は少し高台にある公園の駐車場に向かっていた。そこは街の夜景が見える場所だった。夜景を見せれば満足してくれるだろう、と俺は考えていた。
駐車場に着くと彼女は、「うわぁ〜、キレイ…。この街の夜景もキレイなんですね、初めて見た…」と嬉しそうに身を乗り出し、外を眺めている。
そんなに喜んでくれたことに少し満足し、思わずニヤけてしまっていた。
「私って…」夜景を眺めてる背中越しに、彼女が呟いた。
「私って…どういう存在ですか…貴方にとって…」
どういう存在、って言われても、娘の友達、それ以外にはない、そう答えれば良かった。だが、なぜか言えなかった。
「愛茉の…友達ですか…?そうですよね…それしかないですよね…」
彼女は続けて言った。
「子供にしか見てないと思うけど、女としては見れないですか?」
「お、女?ど、どういう…」
「歳はまだ未成年かもしれないけど…身体はもう大人です。大人の女です…」
いつの間にか彼女は俺との距離を詰め、その端正な顔はすぐ目の前にあった。
「大人の身体なんですよ…お父さん…」
そういった彼女は、スカートの裾をゆっくりあげた。色白のキレイな脚が、下着が見えるギリギリの辺りまで露わになっている。そして俺の手を取り、自分の胸に当てたのだった。
予想外の行動に慌てて「えっ!ちょっ、ちょっと待っ…」と言ったところで、彼女の唇が俺の口を塞いだのだった。
慌てた瞬間、彼女はキスをしてきた。俺は離れようと身を引いたが、今度は両手で俺の顔を押さえるようにして、俺の身体はシートに押されるような形になっていた。
抵抗することはできた。だが、身体が動かなかったのだった。
しばらくすると彼女は俺から離れ、「…ごめんなさい…もう帰りましょ…」と元のように助手席に座り直し、何事もなかったように窓の外を見ていた。
それから車の中は沈黙のまま、彼女の自宅へと向かった。
彼女が、ここでいい、というところで停まり、車から降りた彼女は「私の家、この路地の奥なんで。今日はありがとうございました。」とお辞儀をして、さっきのことは忘れたかのように歩いていった。
俺はそのまま家に帰ったが、車を停めても降りずにずっと運転席に座っていた。
そして、さっきの彼女の行動を思い返していた。自分の唇に触れ、彼女の柔らかい唇の感触を思い出すかのように。
さっきまで助手席にあった、彼女の残像を思い返すかのように。
ベッドに入ってもそれは頭から離れず、俺は眠れぬ夜を過ごした。
翌日。いつもより朝寝坊をした俺は、ベッドに横になりながら、スマホで時間を確認した。時刻は11時近かった。
すると、メッセージ着信の通知が付いており、何気なく開くと、見覚えのないアイコンがあり、その名前に「あんな」とあった
その瞬間、俺は飛び起き、メッセージを開いた。
「昨日は遅くまでありがとうございました。素敵な夜景一緒に見れて嬉しかったです。」と女の子らしいスタンプやら絵文字で埋め尽くされたメッセージがあった。
「なんで彼女が…ライン交換もしていないのに、なぜ…」俺はある種、恐怖のようなものを覚えた。
いつの間にラインできるようにしたんだろう…俺は困惑しながらリビングに降りて行った。
リビング入ると、妻と娘がこっちを向いて、娘が問いかけた。
「お父さん…、昨日杏奈と会ってたの?」
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