「私を抱いて…今、ここで…」
彼女の言葉に思わず顔をあげた。
「そんな…できないよ…」
声を振り絞るように口にした。
彼女は
「…お願い、お父さん…これが…これで最後でいいから…お願い…」
と、言って手を回し、キスをしてきた。
まるであの頃の様に。
彼女のキスは、あの頃と全く変わらず、俺の理性を失わせる、甘美なものだった。
俺は狂ったように彼女を抱きしめ、貪りつくようにキスを仕返した。
彼女の身体は昔と変わらず、綺麗なままだった。俺は妻の遺影を、「ごめん…」と言って伏せた。
どこまでも俺は最低な男なんだ。
彼女は何も変わっていなかった。
キスも、感じるところも。
俺のモノを口にする時も、ぎこちなさが同じだった。
感じている時に、恥ずかしそうに口に手を当てるあの仕草もそのままだった。
「杏奈ちゃん…もうどこにも行かないで…離れないで…頼む…」
そう言って彼女の中に入った。
正常位で、彼女のお腹を突き破らんばかりに激しく突いた。
身体を起こし、対面座位の体勢にすると彼女は俺の問いかけに答えるように、強く俺を抱きしめ、激しくキスをしてきた。
「お父さん…、お父さん…」
彼女は何度も何度もそう呼び続けた。まるで、今までのため込んでいたものを晴らすかのように。
そろそろ俺もイキそうだ。
そういえば…その時まで避妊具を使ってなかった。躊躇していた俺に、
「お父さん…、大丈夫…、このまま…ね、お願い…」と彼女が囁いた。
俺は覚悟を決め、そのままスパートをかけた。
「杏奈ちゃん…、杏奈…、あんなっ!…」
「お父さん、お父さん…、おとうさんっ!…」
俺達は同時にイッた。
それから、暗くなるまで俺達は、何度も何度も抱き合った。
それから
今日は日曜日。休みなのに俺は早起きして、出かける準備をしていた。
今日は初めて祐奈と会う予定だ。
俺は杏奈と祐奈を迎え入れるつもりだ。
娘、愛茉にもきちんと言わなければ。
本当の事をちゃんと言うつもりだったが、杏奈に諭され、過去の事は伏せて言うつもりだ。その方がこれから先、祐奈の為にもいいと思ったからだ。
どこまでも俺はずるくて情けない男なんだろう。
それでも杏奈と祐奈の2人には、この先どうなろうと絶対辛い思い、悲しませるような事はしない、と誓った。
愛茉は認めてくれるといいが。
祐奈は初めて会う俺を怖がらず、懐いてくれるといいが。
残り少ないであろう時間を杏奈と祐奈、2人を幸せにすることができればいいが。
なにより…
なにより、杏奈を幸せにしてやる事ができればいいが。
完
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