第二話 湯浴み
入浴。それはこの時代を生きる人々にとって、貴重な水や薪を消費するそれは至上の贅沢であったが、領主の妻たるアンナにとって、それは容易く日常的なものである。
浴場は、石造りの広々とした空間だった。中央には、大理石の湯船が据え付けられ、湯気と共にほのかな香りが立ち込めている。壁には、異国情緒あふれる美しい壁画が描かれており、神話の女神たちが優雅に湯浴みを楽しむ様子が描かれている。
無言で仁王立ちするアンナの周囲を、控えていた女中たちが恭しく頭を下げて取り囲み、アンナのコルセットやペチコートを外し始める。そしてアンナの肢体から衣服が全て剥ぎ取られた頃、アンナはポツリと声を発した。
「フォウをここへ」
太陽が西の空に傾き、黄金色の光が部屋の隅々まで行き渡っていた。窓の外では、風に揺れる小麦の穂が、まるで黄金の波のようにざわめいている。やがて女中の一人に連れられて、フォウが浴場へやってきた。
アンナはフォウに視線を向けるが、フォウは赤面しながら、アンナの裸体を見まいと、横を向き視線を逸らしている。無垢な少年の恥じらいが、アンナの倒錯した支配欲を掻き立てる。
アンナは、震えるフォウの手を取り、自らの乳房に押し当てる。アンナの豊満な乳房は、フォウの冷たい手を柔らかく、温かく包み込んだ。
昨日から世話係となった美しい奴隷は、サファイアのような青い瞳を潤ませながら、その柔らかさに驚いた様子で乳房に沈んだ手を見つめている。
「女は初めてか?」
フォウは小さな手をアンナに掴まれたまま小さく震える。アンナはひんやりとしたその指先を乳房から引き離すと、鼻先に運んで口に含んだ。
アンナはわざとらしい程に淫靡に、少年の細い指に唾液を帯びた舌を絡ませる。指先にアンナの舌が絡む度にフォウは「うっ…うう…」と小さな吐息を漏らし、その身体はさらにびくりと震えた。
その震えが、アンナの心に甘美な愉悦をもたらす。
「今日は、私と一緒に湯浴みをしましょう」
アンナの言葉に、フォウの青い瞳が大きく見開かれた。その表情は、不安と恐怖に満ちている。私はそんなフォウを愛おしく思い、頬を撫でた。
「心配することはないわ。…さあ女中、フォウの服も脱がせなさい」
女中の一人が、フォウに近寄った。フォウは、その女中から逃れようと、後ずさる。しかし、逃げる場所など、この部屋にはなかった。女中は、フォウの着ていた服を、無理矢理脱がせていく。
そして全裸に剥かれると、フォウは恥じらいから両腕で必死に身体を隠そうとした。しかし、私はフォウの両腕を掴み、その身体をしっかりと固定した。
「…お前の美しい身体を、なぜ隠す必要があるの?見せなさい」
アンナは、涙ぐむフォウに命じ、手を後ろに組ませて直立させる。アンナは少年の裸に息を飲んだ。細く、しなやかな身体。白い肌は、きめ細かく、まるで真珠のように光を放っている。少年のまま成長が止まった胸元は、わずかに胸筋が膨らみ、淡い桃色の小さな乳首が薄っすらと硬さを帯びている。背中から腰は細くしなやかな曲線を描き、弾力のある尻は、男の四角いそれとは違い、中性的な丸みを帯びている。
「…ああ、美しい」
アンナは、思わず呟いた。この世に、これほどまでに美しい身体が存在するだろうか。アンナはフォウの身体に深く魅せられた。私の指先は鎖骨から乳首を経て、陰毛の無い下腹部を滑る様になぞりながら、皮に包まれた陰茎に触れた。
怯えたフォウの陰茎は萎縮しきり、くしゃくしゃに弛んだ包皮に情けなく埋まっていた。
「怖いのか?」
アンナは意地悪く、芋虫の様なそれをふにふにと指先で摘みながら、包皮の奥でコリコリと動く、フォウの陰茎の感触を愉しむ。
「ああっ…ううっ…」
失語した少年が漏らす甲高い喘ぎは、石造りの浴室に響いた。
フォウは、アンナの指技に直立の姿勢を保てず、小刻みに身体を反応させる。恥じらいとは裏腹にフォウの陰茎は徐々に硬さと熱を帯び、包皮の先から珊瑚の様に鮮やかな紅色をした亀頭が顔を覗かせ、その先端からぬるりとした透明な粘液を垂らす。
フォウの息は乱れ、陶磁のような白い肌が桜色に染まり、薄っすらと汗ばんでいる。
「ほら…女中たちも見ているよ?」
アンナの言葉に、見入っていた女中たちは一斉に頭を下げて視線を逸らした。アンナは笑いながらフォウの手をとり、湯船へと向かった。
「続きはまた後で…さあ、湯に入ろう」
アンナは、フォウを湯船へと導き入れた。熱い湯が、フォウの白い肌を包み込む。初めて湯に浸かるフォウは、その熱さに驚いたのか、身体をびくりと跳ね上げた。その様子は更にアンナの笑いを誘った
「あははっ。大丈夫。すぐに慣れるわ」
アンナはフォウを引き寄せると背中に手を回し、優しく抱きしめた。フォウの心臓が、鼓動を早めているのが、アンナの胸に伝わってくる。アンナは湯で濡れた手をフォウの頬に這わせ、髪を撫で上げる。
「ほら。気持ちいいだろう?」
「さあ、フォウ。私の身体を洗ってちょうだい」
控えていた女中が、フォウに化粧油が染みた絹の布を渡した。フォウは、戸惑った様子でその布を受け取った。
「大丈夫よ。さあ、私を清めて」
アンナは、フォウに促すように、湯船の縁に身体を預け、湯に横たわる。
「こうやるんだ」
アンナはフォウの手を取り、自らの肌に絹を滑らせた。
「ゆっくり…優しくだ。いいぞ…」
フォウはアンナに言われるままに、恐る恐る絹の布を滑らせる。最初に触れたのは肩だった。絹の滑らかな感触と、フォウの震える指先が、肌を優しく撫でていく。
「上手だ…」
アンナは目を閉じ、その感触を深く味わう。フォウの手は、鎖骨を通り、デコルテを経て、乳房にに差し掛かる。するとフォウは動きを止めた。
「どうした?」
アンナは、囁くように言った。フォウは、首を横に振るだけだった。
「大丈夫。さあ、続けて」
アンナの言葉に促され、フォウは再び動き始めた。絹の布が、アンナの乳房を優しく包み込む。フォウの指先が、小豆色の乳首の先端をかすめるたびに、アンナの身体は、甘い震えに襲われた。
「…ああ、フォウ。…フォウ」
アンナは、うわ言の様にフォウの名を呼びながら、湯船の中で身体を震わせる。乳房を洗い終えたフォウの手が、今度は腹部を通り、下腹部へと向かう。アンナは、フォウの手の動きに合わせて息を呑んだ。
そして、フォウの手が股間に差し掛かると、アンナはフォウの手を掴んだ。咄嗟の事に怯えたフォウの青い瞳が宙を泳ぎ、アンナを不安げに見つめている。
アンナはフォウの手から絹を取り上げると、側で控えていた女中に渡し、震える声でフォウに言った。
「…ここからは素手でやるんだ…」
アンナはフォウの手首を掴んで陰部に導く。
少年の細い指は怯えを孕んだまま、恐る恐る、ゆっくり慎重にアンナの陰裂の一番上に触れる。
そこはアンナのクリトリスであった。
その瞬間、アンナの身体は、全身を駆け巡る快感に、大きく震えた。フォウの手が、私の陰部を優しく清めるたびに、私は、この上ない悦びに浸っていた。
「…ああん!あっ!」
アンナは、およそ領主の妻の威厳とは程遠い、弱々しく甲高い女の声をあげ、奴隷であるフォウの名を、まるで愛しい恋人を呼ぶかの様に、何度も何度も呟いた。
主人の長い不在に渇ききっていたアンナの身体は、急激に潤いを取り戻していく。フォウの手で何度も絶頂を迎え、湯船の中で甘い愛液を垂れ流し、最早理性を失っていた。
「はあはあ…今度は、私の番だ」
アンナは、フォウを湯船の縁に座らせると、太腿を開かせ、その股座に顔を埋めて口を大きく開けると、縮んだ包皮諸とも咥えこんだ。
フォウは不意の刺激に身を躱そうとするが、アンナはフォウの細い腰を捕まえて逃げる事を許さず、包皮と亀頭の間に舌を捩じ込んで、そこに溜まった恥垢を舐め取る。
「ああっ…美味しい…美味しい」
天使に溜まった不浄の味が、アンナの脳を溶かす。そこにいるのは、発情した一頭の獣だった。
アンナが頬を窄め、ジュボジュボと下品な音を立てて、少年の陰茎を貪ると、それはアンナの口の中でムクムクと大きくなり、やがてアンナの口内を満たした。
「アッ!ウウウー」
フォウは涙を流し、声をあげて必死に逃げようとするが叶わず、されるがままにアンナの口内に大量の精を吐き出した。
「んっ!ううっ!」
生臭い男の臭いが、アンナの鼻腔を抜けるが、アンナにとってそれは何よりも甘美なアロマであった。
アンナはフォウの精液を舌の上で何度も転がし、味わい尽くしてから、一息に飲み込み、全てを胃袋に収めた。
フォウはぐったりと脱力し、放心した様子で仰向けに倒れ、アンナは追い掛ける様に再びフォウの陰茎にしゃぶり付くと、最後の一滴まで残った精液をしごき出して味わった。
「…ああ、フォウ。あなたは、なんて可愛いの」
アンナは、フォウに身体を起こさせると、再び湯船に導き、頬を寄せて唇を重ねる。
「さあ坊や。吸っておくれ」
アンナは、フォウの身体を抱きしめ、赤子に乳をやるかの様にその乳首を吸わせた。まるで甘える様にフォウの細い腕がアンナの背に回ると、アンナは倒錯した性欲と母性の間で、さらに深い充足感を得た。
少年の白い肌、美しく中性的な華奢な身体、そして、漏れ出る甘い喘ぎ。荒々しい無骨な男では味わえない、少年だけが持つ魅力のすべてにアンナは堕ちてゆく。
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