夜が明けても私は眠るでもなく、食事をするでもなく、ただたっくんの残滓を眺めながら抜け殻の様に過ごした。
どれくらい時間が経っただろうか。不意にドンドンと乱暴にドアを叩く音と子供の声が響く。
「おばちゃん!あそぼ!」
コンクリートの様に灰色に淀んだ世界が色付き、私の四肢に温かい血液が流れ込んだ気がした。
私は飛び上がって慌ててドアを開けるとたっくんは笑顔でそこに立っていて、私の顔を見て「おばちゃん!遊べる?」と改めて私に問うた。
「うん。遊べるよ。入って」
私はたっくんを再び部屋に招き入れる。
こうしてたっくんと私の関係が始まり、やがて深まり、最終的にたっくんの母親が再婚して引っ越す中学1年生まで続く。
そんな記憶の遍歴である。
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