カシャ! カシャ! カシャ!
紛れもないスマホのシャッター音だった。レイナはフリーズすると目をまん丸に広げ、ゆっくりと2階の室内に振り返った。暗い室内に目を凝らすと、1階につながる登り棒の穴からスマホを握った手が出ていて、撮影中の赤色のLEDが光っていた。
スマホと見つめ合うレイナの時が止まるが、頭はフル回転でこの状況を理解しようとしています。
(えっ……、スマホ?? 写真撮られた? オナニーしてるの撮られちゃった? やばくない? 誰だか知らないけど……、うそっ……、わたし……晒されちゃうの? うそっ! やばいじゃん!!!)
事の重大さがレイナの頭に理解されると同時に、スマホを握っている手が開き、スマホが1階に落ちると、レイナを挑発するようにバイバイと手首を振って手も嘲笑うかのようにスッと消えていった。
レイナの時も動き出した。
「ちょっ! ちょっとまって!! いやだっ! 待ってよぉ! 何でもするから! ねぇってば!!」
木の床を這うようにレイナはバタバタと四つ足で穴に近づくと1階を見下ろした。すでにそこには人影がおらず、いつもの静けさが残っていた。
(はっ、早く服を着ないと!!)
レイナの興奮は一気に冷め、目に入ったファーコートに飛びつくように全裸で登り棒にしがみつくと滑り降りた。冷たい鉄棒も状況次第では下腹部をこすりつける快感を与えるが、この時はただの移動手段でしかなくなっていた。
半ば飛ぶように1階に降りると、直ぐ様目に入っていたファーコートに袖を通すと、さらなる現実を知ることになる。
「スッ…スカートが……ない……。えっ!どこ? 落ちた? いや、ない! ない! ないよぉ〜!!」
ファーコートの隣に置いたはずの茶色のチェックスカートはどこを探しても見つからなかった。きっと持っていかれたのだろうと、まだ西陽が差し込む出入り口に走り、頭だけ外に出して辺りを見回すと信じられない光景が目に入った。
アスレチックの隣のベンチに男が座り、手にスカートらしきものを持つと、顔に押し当てて匂いを嗅いでいるようだった。
(えっ……、あれ、わたしのスカート!? 何してるの? まさか匂い嗅がれてる?? えっうそっ……、あっ、あんっ……嗅がれちゃってるよね……わたしの匂いのついた……スカート……)
あり得ない光景を目にしてしまったが、レイナ自身にもあり得ない感情が生まれていた。自らの匂いのついたスカートを男の人に嗅がれるという羞恥。驚きで消えた興奮がまた、下半身の疼きから徐々にレイナの中で膨らんできた。
(あん……恥ずかしい……わたしのお汁の匂いが付いちゃってるかも……でも、どうしよう。アレがないと帰れないよぉ……)
ショート丈のファーコートでは、可愛い子一本筋がどうやっても隠せない。レイナはコートの丈を少しだけ恨んだ。その念が届いたのか、ベンチに座る男がアスレチックの方へ顔を向けると、想定通りと言わんばかりに、手招きをした。
レイナはその顔をまじまじと見ると、なんと先日出会ったナオトだと認識した。
(あぁ! あの人……サッカーのコーチ……。もしかしてあの時見られてたんだ……だからこんなイタズラ……この格好で行かなきゃいけないの?? いやん! 恥ずかしい……)
手招きに思いが決まらず戸惑っていると、耳に残る声が聞こえた。
「お〜い。レイナちゃん! こっちおいで! 誰もいないから大丈夫だよっ!」
(ホントに誰もいないのかしら……あれ? いまレイナって呼んだ? うそっ。わたし名前教えてないよね? まさか……もうユウタくんに……)
全てナオトにお見通しの状況にレイナは諦めると、辺りを気にしながらアスレチックから出るが、少しの反抗としてふくれっ面でベンチへ向かった。
「あはっ、ごめんごめん。ちょっといたずらしすぎちゃったね。怒らないで。ほら、スカート」
両手で一本筋を隠すレイナの目の前にスカートを差し出すと、片手を残して掴みにかかるが、ナオトはスッと背中に隠した。
「返して欲しかったら、かわいいレイナちゃん、もっと見せて欲しいな。だめかな?」
「だっ、駄目です! スカート返してください!」
ふくれっ面をさらに膨らませるが、ナオトにはレイナを服従させられる自信があった。
「あれ?そうなの? さっきレイナちゃんが可愛い声で、見せてあげるねっていいながら気持ちいことしてたよね?」
「べっ、別にそんなこと言って……」
レイナの目の前にスマホを見せるナオト。
「おかしいなぁ。この中にその声が入ってるんだけどなぁ?」
逃げられない状況に唇を噛みしめるが、同時に下半身にも熱がこもりだした。
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