「寒っ! って、わたしなんてことしちゃったんだ!!」
レイナは再び膨らみかけの胸と一本筋を両手で隠すと、無意味に身をかがめながら服を脱いだアスレチックへと逃げ込んだ。直ぐ様、ファーコートを肩にかけ、素肌にチェックスカートを履くと力が抜けたようにアスレチック内のベンチに腰を落とした。
(わたし、すごいことしちゃった……見られてたらどうしよう……。大丈夫だよね……すごく注意したし……。わぁ、脚がビショビショ……こんなの初めてだよ……)
レイナは、薄暗いアスレチックの中で持ってきたハンカチを取り出すと自らの脚を濡らす興奮のスプラッシュを丁寧に拭き始めた。
しかし、大満足の快感跡をレイナが後片付けしている時、頂上の広場で男がひとりタバコをふかしていたことをレイナは知る由もなかった。
◇◇
「ふぅ〜〜………。いやぁ〜。すごいもん見ちまったなぁ……ん〜、困った」
今流行りの電子タバコではなく紙タバコをふかす男は困ったようにつぶやきながら頭を掻くが、見たことに対する困惑よりも、今後視界の中で悶え楽しんでいた少女をどう楽しむかで悩んでいた。
(実際にあぁいう子、いるんだな。てか、まさか小学生か? もしかしたらアイツラのクラスメイトだったりして……。ん〜、どう楽しもうか……)
レイナを獲物のように見つめていた男は、三波ナオト。
近くに住む大学3年生。塾講師のバイトをする傍ら、教え子の小学生男子に趣味のサッカーを教えるアニキ肌の青年だった。この日も頂上の広場でサッカーを教えるため、レイナのすぐ後に公園を訪れると、ひとり階段を下がるかわいい後ろ姿が気になり、木に隠れるように様子をうかがっていた。
(あのアスレチックの中に入っていったということは……あそこで服を脱いでるんだな? おっと……、出てきた。一応知らない振りしとくか……)
ナオトは隠れる木のすぐ横にある園内歩道のベンチに腰掛けると、レイナが登ってくるだろう階段に注意を向けながら、スマホをいじりだした。
◇◇
(よしっ、服も着たし……怪しまれないように帰らないと……)
レイナはあたかもアスレチックで遊んでいたように自然に外へ出ると、過剰にキョロキョロしないようにしながらも、辺りを目で確認していた。
(大丈夫、大丈夫。ふふっ、ドキドキしちゃう)
余裕が出たのか、口角が上がると降りてきた階段を足早に登った。登り終えて公園の出口に向かい園内歩道を進んだとき、レイナの脚はパタリと止まった。
(えっ……、人がいる……どうしよう……。いつからいたの? わたしの声、聞かれちゃった!? うそっ! えっ! えっ!)
思いもよらぬ光景に戸惑いを隠せなかった。しかしここで踵を返しては怪しすぎる。そう感じたレイナは鼓動の高鳴りを感じながら、静かに前に進んだ。
ナオトはその立ち止まりを周辺視野で感じると、つい無意識にレイナに目を向けその容姿を目入れたが、あまりにも自然に見てしまったため、咄嗟に手元のスマホに目線を戻した。
(けっ、結構……いや、すげぇ可愛い子じゃん……こりゃ……どうにかしたいな……)
一瞬の確認だったがナオトはレイナを気に入った。それと同時に内なる欲望が沸々と沸き上がってきた。そう、ナオトは根っからのロリコンだった。人よりも明晰な頭脳を生かして、小学生の塾講師をしているのも主目的はロリのラッキースケベを頂きたいと思っていたからだが、いまだ美味しい思いまでは辿り着けてなかった。
もうすぐ目の前を通過するレイナにナオトは意を決して話しかけた。
「こっ、こんにちは。七星小学校の子かな?」
「はっ、はいっ!」
上擦ったナオトの声かけに驚くように上擦って返事をするレイナ。傍から見たらあまりにも滑稽で怪しい2人だった。
学校のホームルームでも繰り返される個人情報には答えないというこのご時世で、ストレートに問いかけてしまったナオトだったが、レイナもまた答えてしまうほど、2人とも余裕はなかった。
咳払いを1つして若干の冷静を取り戻したナオトは話を続けた。
「今日はもう学校は終わったのかな? 俺、ここで塾の教え子の5年生にサッカー教えてるんだけど、まだ来てなくて」
「えっ、あっ。学校は終わってます……でも今日は、放課後解放日なので、小学校でサッカーやってると思います」
「あ〜、学校でやってるのか。今日、教えてやるって言っていたんだけどね。あっ、もしかしてユウタとかケンタは知ってるのかな?」
「!!!! いやっ、その!!知ってると言えば……知ってるようなぁ……」
先程までおかずにしていた名前が出るとレイナは慌てふためいた。話のきっかけと思って聞いただけのナオトにとっては深い意味がなかったが、この反応は何かあると踏んだ。
「まぁ、無理にとは言わないけど、俺が待ってたって、学校で伝えておいてね! ナオトが待ってたよって」
「えっ、あ……はい……。ナオトさん……ですね……」
「ちなみにさ、次の放課後開放日っていつ?」
「たしか……金曜日です」
「了解!ありがとうね」
「あっ、じゃあ……さような……」
「あぁ〜、そうそう。最近寒いから風邪引かないように楽しむんだよ!」
そう言うとナオトは足元にある自分のサッカーボールを転がすと、広場で華麗なドリブルを見せつけた。レイナは呆気にとられ、直前の意味深な言葉に気を止めることができなかった。
(ふぅ〜、よかった。気づかれてはなさそうで……。ユウタくんの名前が出たときは驚いちゃったけど……。でもナオトさんだっけ……ちょっとかっこいいかも……。あんなおにいさんになら、わたしの裸……見られちゃってもよかったかも? いやいや、ダメダメ……。なにいってるの! わたし!)
声かけによる緊張の糸が解かれると、レイナは再び色めきの妄想を始めた。これまで見られるか見られないかギリギリのところを楽しむレイナだったが、徐々に見られたいと言う思いが強くなってきた。それに気がつくと、レイナは顔を赤らめ足早に公園を去っていった。
「次は、金曜日か……一応、下の広場を下見しておくかな……」
公園の出口の階段を降りていく後ろ姿をナオトは見ながら、ある行動を計画していた。
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