あれからまもなく1ヵ月になる。
数日足を運んだが、中年男が独りで児童館という施設にいるのは、さすがに怪しい。
不審者認定されては、元も子もないので作戦を変え、SNSやホームページなどから情報収集にあたる。
どうやら週ごとで、学区を変えて利用できる学校を決めているらしい、計算だと、ひと月で元に戻るようだ。
会えるなら、きっと今週に違いない。
まいかに出会った火曜日を決行の日に決めた。
そこで前と同じ行動をする。
根拠はないが、集団行動をしているとある程度、パターン化するような事を聞いたことがある。
当日、15時45分、前と同じ公園でパソコンを開き、仕事のふりをしながら、まいかとかりん、二人の少女を探す。
きゃあきゃあと声を上げて、はしゃぐ少女たちの声があちらこちらから聞こえて来る。
穏やかな景色の中で、この前のことを思い返していた。
「オジサン、見えますか?」「ふふっ、恥ずかしーい」「ファスナー下げても大丈夫ですよ」
真っ直ぐな眼差しを向ける、無垢な少女の前でファスナーを下ろし、赤黒く脈打つ陰部を見せつける快感が再び自分の中を駆け巡る。
ああ、会いたい。どこにいるんだ?
しかし周囲を見渡していると、二人の特徴がだんだんわからなくなっていた。
そう、天真爛漫な笑顔を見せて遊ぶ子どもたち、みんなたまらなくかわいいのだ。
正直、二人の顔を忘れそうになる。
二人の特徴と言えば、まいかがツインテール、かりんはショートボブ、一か月前と今では、服装も夏の装いに変わっていた。
ゴールデンウィークもまだだというのに、かなり暑い。
ここで仕事をするのは無理があるな。
不審人物にならないように、さり気なく、なるべくぼんやりと少女たちを見つめる。
そのうちボール遊びをする淡いパステルカラーのパーカーを着る女の子に目が行く。
あの子、まいかに似ている?
まいかじゃないのか?
髪型は、ポニーテールと違うが、背格好もよく似ている子だ。
だが、正直自信がなくなっていた。
向こうから反応が返ってくればいいのだが、見つめても目が合うこともない。
似てるように思ったが、違うのか。
あまりジロジロみて不審者扱いされちゃ敵わないしな。
また、別の方向を探す。
ん?
足もとにボールが転がってくる。
ごめんさいっ。
こ、この声?
パステルのパーカーの子が近づいてくる。
確証はないが声をかけてみる。
ま、まいかちゃん・・?
しかし返事はない・・・やはり違うのか。
少女は、ボールを蹴り返すと、俺のすぐ横でパーカーを脱ぎはじめた。
脱いだパーカーを無造作に畳み、俺の横に置くと、またボール遊びに戻っていく。
知らない男が座っているのに、服を置くだろうか。
ちょっと、それ下着じゃないのっ?上着は着て~。
母子指導員の声がこだまする。
走り去る少女の背中しか目に入らなくなっていた。
汗ばんだ肌がキラキラ光っていた。
腕を振ると肩甲骨が躍動して、皺ひとつない肌が反射して輝いていた。
スポーツブラ姿の少女は、振り返って、僕に優しい笑顔を向けた。
・・・間違いない、やっぱりまいかだ。
まいかは、リフティングをして遊んでいる。
僕は、まいかにわかるようにもう一度、視線を送る。
今度は目が合った。
まいかにわかるように自販機の場所に向かう。
それから一分一秒がとても長く感じた。
たぶん、前と同じ時間に、僕はまた、まいかに会うことが出来た。
まいかちゃん・・。
これ落ちてましたよ、オジサンのものじゃないですか?
そういって、小さく折りたたんだ紙を渡すと、いなくなってしまった。
紙をひろげる。
バーガーショップで待ってて。
また会えてうれしいっ。
Maika
今度こそ、誰にも邪魔されずに、まいかと二人っきりで会える。
先にハンバーガーショップに入り、外を眺めていると、駆け足で向かってくるまいかが見えた。
小さな身体を思いっきり抱きしめてあげたい気持ちが溢れてきて、思わず涙腺が緩んでいた。
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