「あ、あのっ!ごめんなさい!全然連絡もしなくて…」
「あ、いや、来てくれてうれしいよ!とりあえず上がって」
「はい…」
僕はあゆみを、ワンルームの部屋の食卓に使っているテーブルのイスに座らせ、冷たいお茶を出した。
「学校、始まったの?」
「あ、今週から…まだ午前中だけだけど…」
「そうか、よかったね!」
「…あれから、あなたと別れてから、考えたんです。あの、一緒に過ごした時間は何だったのかって…」
「僕が消えたら…冷めた?」
あゆみは大きく首を振った。
「全然、頭から離れなくて、戻ってきてほしくて…でも、それも含めて地震のせいなのか、そうじゃないのか、いくら考えても…」
実家に戻り、ほぼ日常を取り戻した僕と違い、あゆみはまだインフラも復旧していない、被災地にいるのだ。
この想いが吊り橋効果の影響なのか、こんな状況じゃなくても惹かれ合う運命だったのか、まだ判断できなくて当然だったのかも知れない。
「考えれば考えるほど、分からなくなっちゃって、だから、もう、いいかなって思って…」
「そうか…」
僕はこの『いいかな』を、僕との関係を終わりにするという意味だと捉えた。今日は、別れの挨拶をしに来ただけだと…
ところが、僕が項垂れていると、あゆみは無言で奥の、ベッドが置いてある部屋に行き、ベッドの上に座った。そして、ブラウスのボタンを一つずつ外して行った。
「あ、あゆみちゃん?何して…」
「あ、すみません。私、言葉が足りなくて…」
「この、あなたへの想いは多分、本物です。確信はないけど。だったら、あなたの望みを叶えてあげたいって…」
そう。僕はあの夜確かに、あゆみの身体を求めた。そして今あゆみは、『僕のことが好きだから』それを許してくれるという。だが僕の方は?あゆみの事が好きだから、恋したから、触りたいと思ったのか。それともただの性欲か…
それこそ、確信が持てなかったが、だからと言ってこの状況で、ガマンできるものではない。
吸い寄せられるように、僕はベッドに近づいた。あゆみはブラウスの前を広げ、そのままベッドに横たわった。
宝箱を開けるように、白いスポーツブラを捲り上げると、夢に見た…実際に、Tシャツの上から触って以来何度が夢に見てしまった…真っ白いおっぱいがふたつ、現れた。
僕は理性が吹き飛んだようになり、夢中でピンクの乳首にしゃぶり付いた。舌先で触れると驚くほどふにゃふにゃで、でもそれを繰り返し舐め潰す内に、どんどん固くなり、唇で挟める程になった。右を勃起させると、次は左。交互に舐めながら、口に含み、舐め転がす。
あゆみはあえぎ声が恥ずかしいのか、避難所暮らしでよけいな声を出さない癖がついたのか、口をギュッと結び、全身でビクンビクンと反応しても、声を上げてあえぐことはなかった。
ふたりの荒い呼吸だけが耳につく、狭いアパートの部屋。僕は本能的に、プリーツスカートの裾を捲り上げ、あゆみの細い太ももの内側に触れた。ストッキングは履いてない、すべすべの素肌。あゆみは反射的に脚を閉じ、僕の掌を挟み込んだ。
その時ふと、顔を上げてあゆみの様子を見てみると、恥ずかしさから顔をしかめ、首を横に背け、ブルブル震えている。
『これは…』
それを見て、僕の興奮が急激に冷めて行き、僕はスカートから手を出して裾を整え、乳首からもそっと唇を離した。
不審に思ったあゆみが、顔を上げて僕を見つめた。
「ここまでにしよう」
「…なんで?」
「僕はまだ、君に告白もしてないし、デートも…」
「私がいいって言ってるのに?」
「うれしいよ、すごく!でもどう考えても、これじゃあのオジサンたちと同じになる気がして…」
するとあゆみはフフッと微笑み
「やっぱりあなたは優しい人。今確信しました!大好き!」
と言って僕に抱き着き、キスしてくれた。
ふたりとも、ファーストキスだった。
その後、僕たちは何度もデートを重ねた。と言っても最初は、あゆみは携帯を持ってないし、避難所暮らしだったので、あゆみの学校の近くの図書館で待ち合わせた。僕が急な用事でどうしてと遅れる時は、図書館に電話して呼び出してもらう。あゆみの方に用事ができた時は、公衆電話から僕のスマホに連絡をくれた。
その内にゆるやかに復興が進み、大学も再開したので僕は、大学近くのアパートに移った。
ライフラインも復旧したのであゆみ一家も自宅に戻り、ほぼ、以前の日常を取り戻した。また、これを機にあゆみはスマホを持たせてもらえたので、俄然連絡が取りやすくなった。
デートは、だいたいいつも、図書館で話したり、あゆみの勉強を見てやったり。でも時々どうしてもガマンできない時は、あゆみにアパートに来てもらい、胸だけ愛撫させてもらった。
限定的な性行為だったが、どんどん反応がよくなるあゆみに、僕は次第に『その次』をガマンするのがしんどくなって来た。
それから1年が過ぎ、あゆみは受験期を迎えた。僕はまだ大学2年で忙しくなかったので、毎日のように図書館で会い、受験勉強に付き合ってやった。その甲斐もあって、翌春あゆみは、志望校に合格し、女子高生になった。
このタイミングで、受験に協力したお礼も兼ねて、ようやく僕は彼女の処女を貰うことができた。
その後も、順調にふたりの交際は続く。
思えば日常なんてものは、普段思っているより、はるかに脆い。
今回僕が経験したのは、中規模地震と避難所生活。建物の倒壊も火災もなく、死者もゼロだったと聞いた。
しかしその程度でも、日常ではシェルターの役割をしてくれる、家の壁や鍵を失った、立場の弱い女性は貞操の危機に襲われる。
一方普段は社会や法律に飼い慣らされている中年男どもは、本能が制御するのが難しくなる。避難所での性犯罪多発がニュースでも取り上げられる所以だろう。
凡庸な大学生の僕は、幸運にも本能の制御に苦しむ方ではなく、少女を守る側に立つことができ、さらに理想的な彼女まで手に入れることができた。災害で不幸になる人が多い中で、これが天啓でなくて、何だろう?
この絆を守り続けるため、一生懸命努力しなかったら、ひどい天罰が当たっても、文句は言えない。そうな風に思う、今日この頃である。
※元投稿はこちら >>