お父さんの葬儀はしめやかに行われた・・・。
弔辞を葬儀委員長の高山先生が読み上げる。
お父さんが危篤となり、通夜の夜に、お母さんが受けた屈辱の事件など私は知る事も無く
高山先生の虚言に満ちた弔辞など想像も出来なかった。
涙を堪えるお母さんだって、お父さんとの別れの涙だと思っていた・・・。
泣きじゃくる私を優しく宥めながら・・・。
私のいく末を哀れむ涙だったとは気付かなかった・・・。
その日のうちに初七日まで終えて滞りなく葬儀は終わった。
翌日、お母さんから衝撃的な話を聞く事になる。
病院の経営権を巡って、買収を掛けられていること、私達親娘が今の自宅にいる為には
買収を受け入れる事と・・・高山先生と再婚しなけらばならないと言う事だった。
お母さんは病院を存続させるには仕方が無いと言っている。
だけど、新しいお父さんなんてまだ考えられない・・・。
それより、あの人がお父さんだなんて・・・お母さんだって嫌なはず・・・。
どうしてなの?・・・。
お父さんの四十九日を待って、病院スタッフに告げると言った。
余りにも早すぎる、私には理解出来なかった。
思いもしない展開から時は過ぎ、お父さんの四十九日が終わると理事長であるお母さんが
病院スタッフに告げた・・・。
『みなさん、この病院は来月一日から、高山クリニックとして再出発します。
今迄頑張って頂きましたが、高山グループとして高山先生を理事長兼院長としてお迎えします。
そして、私は副理事長として高山先生の助力をさせて頂く事になりました。
また、私的では有りますが・・・高山先生と再婚させて頂く事になりました。
以降は、高山先生が経営を管理されますのでよろしくお願いします。
それでは、高山先生お願いします』
黒のスーツでピッチリ決めたお母さんと違い、スタイルも人相も悪い高山先生が前に出る。
『あ、今お話があった様に、来月一日から理事長兼院長に就任します高山です。
今後は高山グループの一員になった事を自覚して勤務をお願いします』
職員全員が騒めく・・・。
まさか・・・こんなに早く?
なんてこった、お子さんだってまだ小学生だぞ・・・。
高山先生はお構いなく、連絡だけして集会は終わった。
私は学校にいてこんな事になっていると知らずにいた。
その日の夜から高山先生は、私のマンションに帰る様になった。
私が家に帰ると、高山先生がいた。
『ただいま・・・』
玄関に見慣れない靴があるので、気になりながらダイニングに入ると・・・。
『おかえり、ちさとちゃん・・・』
『え、なんですか?どうして高山先生が・・・』
『ちさと、今夜から一緒に暮らすの・・・判って・・・』
『・・・・は・・い・・・』
私はお母さんの雰囲気から全てを察する・・・。
今夜からこの男が私達親娘の運命を握る事になる事を私は知らなかった。
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