程なくして、車は病院に到着する。
急いで病棟のお父さんの病室に向かった。
病室に入るとお母さんが看病している・・・、落ち着いているのかと思ったが
お母さんの様子はおかしい・・・。
ナース服が乱れ、いつもの毅然とした雰囲気を感じない・・・。
お父さんの生命維持装置のモニタに表示されている血圧と心拍の数値がいつもより
低く、乱れ始ていた・・・。
『お父さん・・・死んじゃいやだ・・・お父さん・・・』
私は何も考えられずお父さんに抱きつく・・・。
『・・・・・』
お母さんの目には涙が溢れていた。
しかし、その涙はお父さんへの懺悔の涙であり、これからの親娘の行く末を・・・
いや、娘の行く末を哀れむ涙である事を私は知らなかった・・・。
『お母さん!お父さんどうにもならないの?・・・高山先生・・・大丈夫だって言ったじゃ無い・・・
なのに・・・どうして?・・・・』
生命維持装置のアラームが鳴る・・・高山先生は脈を取り、何かの注射をした。
しかし・・・、モニタの血圧が下がり、心電図はゼロになる・・・・。
『13時30分ご臨終です・・・』
高山先生はそう告げて、お父さんの顔に白い布を被せた・・・。
私は目の前が真っ暗に成る・・・。
お母さんと私は泣き崩れ、お父さんに抱きついていた。
その二人の肩を、高山先生がさすりながら・・・。
『出来るだけの事はしました・・・残念です・・・』
それだけを言って病室を去っていった・・・。
お母さんは私を抱きしめて・・・。
『ちさと・・・ごめんね・・・お母さん何も出来なくて・・・』
この時、私はお母さんが謝る意味が判らなかった・・・。
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