賢治はお父さんの診察も行う様になる。
お父さんの病状は賢治が診察を行い出してから更に状況が悪化する。
看護をしているお母さんはその変化を肌で感じていた。
ある夜、病院には宿直医が緊急オペに対応していた。
お母さんは看護士長としてシフトに入っていた時に事件は起こった。
定期の検診でお父さんの病室に入った時に賢治と遭遇したのだった。
『あれ?高山先生・・・ここで何をされているのですか?』
高山は今夜は日番のはず、なぜこんな所に居るのか判らなかった。
『いやあ、森高さん・・・あなたを待っていたんですよ、もう判ってるでしょう?
どんなに頑張ってもこの先生がダメだって事・・・それに、ここの経営だって既に
僕の思う様になっているんですから・・・』
『高山先生・・・何を言っているの?・・・確かに主人は意識が戻らない・・・
だけど、え・・・経営があなたの思う様にって・・・どういう事ですか?・・・』
『鈍い人だね・・・最初から仕組まれてたって判らないかねえ・・・』
お母さんは、お父さんの事で頭が一杯で、病院の経営は知らない間に副理事長である
賢治が掌握していた、今夜だって本来なら二人きりになるシフトでは無かった。
賢治の指示でここには誰も来ない・・・。
お母さんは、賢治の足元に崩れ落ちた・・・。
『さあ、返事聞こうかな?ここを去るか、俺に服従するか?・・・』
お母さんの顔を指で顎を引き自分の方を向かせて見下ろしながら言った。
『・・・・・』
お母さんは歯を食いしばって、賢治を睨み付ける・・・。
『良いんだよ・・・経営破綻して、俺の病院の傘下になって仕舞えば・・・
先生はどうする?ちさとちゃんはどうなる?・・・俺が居なければどうなるのかな・・・』
全てを悟った、高山達の差金だった事を・・・。
この男の言う通りにしなければもう選択肢のない事を・・・。
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