いよいよ一人で登校する時が来た。
朝ご飯だけはいつも家族で食べていた。
昨夜から緊張して眠れなかったが、なんとか起きて、お母さんと朝ご飯を用意した。
『ちさと・・・今日から小学校だね、遠いけど気を付けていくんだぞ・・』
『うん・・・大丈夫、心配しないで・・・お父さん・・・』
『まあ、電車一本だから・・・でも、ちさとお母さんが注意した事は守るのよ・・・』
『うん・・・大丈夫だよ・・・』
私は緊張していたが、心配させない為明るく返す。
初めての小学校の制服に袖を通しながら、姿見でチェックする。
幼稚園の制服は少し小さく、スカート丈も短かったがセーラー服は少し大きめで、スカート丈
も長く、歩きにくい。
ウエストで少し折り返して、股下5センチ迄捲り上げた。
ちょっと動いてもショーツが見えないか確認して、髪をポニーにしてランドセルを背負って
家を出る。
駅まで歩いて行くと、朝の清々しい空気が私を包み、温かい太陽の光で、新しい生活の始まり
を祝福してくれているみたいだった。
けれど、駅に入って現実を知る。
朝の通勤通学ラッシュの真っ只中・・・、改札口から人の波・・・圧倒され緊張してくる。
通学定期を首から下げていた事を思い出し慌てて用意する、もうお母さんに言われた事など
忘れていた、ただ人の流れに飲み込まれて行く・・・。
私は大人達の腰より少し高い位の身長・・・そのままホームに流される様に・・・。
電車は定刻通りにやってくる、もう乗り込む事しか考えられなかった。
ドアーが開くと同時に降りる人はいない・・・その中に押し込まれていった。
逃げる様に降りる側のドアーに向かった・・・しかし、そちら側のドアーは降りる駅まで開かない。
お母さんが注意した場所の一つだった。
私はおじさん達に囲まれていた、私を中心に皆んな私の方を向いている。
みんな中年のおじさんみたいで太っていた。
ランドセルを背負っていたせいで、後ろのおじさんとの距離はあったが、前のおじさんと
両側のおじさんの腰で挟まる感じだった。
身動きもできない状態で、両手で前のおじさんをガードしなければ息ができなくなる。
それに、おじさん達の臭いと香水の混じった臭いは気持ち悪くなりそう・・・。
それに、上を見上げるとおじさん達の見下ろす目が怖かった・・・。
※元投稿はこちら >>