幼稚園の卒園式が近付く頃、注文した制服などが届いた。
幼稚園では、ベレー帽と麦わら帽があったが、ここでは夏だけツバの広い白い帽子でした。
想い出の残る制服だったけど、小学校に上がる期待と不安が一杯だった。
初めての電車通学が一番不安で、一人で行くのにも躊躇していた。
それでも、ランドセルや制服を見ていると、新しい生活にワクワクもしていたのでした。
いよいよ、卒園式当日を迎えた。
お母さんと、お父さんが会場に来ているのが見えた、順番に卒園児が卒業証書を受取り
リハーサル通りに式は進んで、私達は卒園した。
今度は入学式までお休みになる、そんなある日に事件は起こった。
あの幼稚園バスのおじさんを家の近所で目撃したのだ。
私は以前に約束した事を思い出した、卒園する時に制服と水着を譲って欲しいと言った事。
私の家を知らないおじさんは、私を探している?・・・。
あの日のトラウマをまた、思い出してしまう・・・。
でも・・・お小遣いは魅力的だし・・・どうしようか迷っていた。
誰にも相談なんて出来るはずはない、そんな事を思いながら歩いていると、あの公園に
近付いていた、もうすぐ夕方・・・まだ春先で日が暮れるのは早い。
公園は遊んでいる子供の姿も少なく、私はブランコに揺られながら少し先の大型遊具の
トンネルを眺めている。
あのトンネルだ・・・忘れていた・・・ここでの出来事・・・ブランコの鎖を持つ手に
力が入る、太ももがもじもじしてきた・・・そんな時・・・。
『ちさとちゃん・・・だね、おじさん探したよ・・・』
私は驚いて振り返る・・・あのおじさんだ・・・最悪のロケーションで見つかってしまった。
『・・・・・』
私は言葉も出ない・・・。
『おじさんが居なくなって、寂しかったかな?・・・約束覚えてる?・・・』
『・・・うん・・』
『そうなんだ、それは良かった・・・じゃあ約束守ってくれるんだね・・・』
『うん・・・良いよ・・・』
『ちさとちゃん、小学校はどこに行くの?・・・また、おじさんと会ってくれるかな?』
私はこのままではいけないと感じ始めていた、とりあえずこの場所を離れようと思って
『おじさん・・・ちさと家から取ってくるから・・・あのコンビニで待てて・・・』
私はおじさんから逃げる様に家に戻った、おじさんがつけてることなど知らずに・・・。
押入に有る制服と体操服、水着をカバンに詰め込んでコンビニに向かった。
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