帰りの車中でプライベートな話をするようになると、愛菜香は塾の授業でも、何かと私をサポートしてくれるようになった。プリントを配るのを手伝ったり、理解の遅い子がいると、近寄って行って教えてやったり…まるで自分が『先生にとって特別な存在』とアピールしているかこようだった。
それに対し他の生徒も、ひがんだり、からかったりしなかったので、私たちは『クラス公認の仲』みたいになって行った。
そんな疑似恋愛は、中学校の若い男性教員とおマセな女生徒との間でもありそうな話だが、たいがいそれ以上の発展はないまま、長くても生徒の卒業までで、自然消滅してしまう。よほどのきっかけがなければ。
しかし私と愛菜香には、そのきっかけが訪れた。
私がその塾に再就職したのが9月。それから3ヶ月が経ち、期末テストの時期になった。
それは、補習塾の講師にとっては正念場だった。学力不振で塾を頼ってくる中学生の親にとって、定期テストの成績は非常に重要だ。一生懸命通わせても効果が薄いとなれば、至急別の塾を探さなければならない。
私も塾長も、連日深夜まで、各学年、教科の対策問題を用意し、正規の授業外でも自習したい生徒に空きスペースを開放し、質問に対応し… そんな生活に不慣れな私は、テスト直前になるとヘロヘロになった。それでも、授業後の残り勉強には付き合わなければならない。
その夜。やはり最後まで残っていた愛菜香は、8時過ぎても帰ろうとしなかった。長丁場になりそうなので、途中コンビニ弁当を食べさせて一休みさせ、それからまた勉強。教室でそれを見守りながら、私はついウトウトしてしまった。
「先生?」
「ん?ああ、ゴメン…」
「…あたし、もう帰るね」
「そうか?」
しかし、愛菜香の机の上を見ると、まだやりかけのワークが広げられていて、キリがいい所まで終わったという感じではない。くたびれた私を気遣ってくれているのだ。
もう少し、勉強に付き合ってやりたい。だが体力的に限界なのも事実だった。そこで私は『折衷案』を提案した。
今思えば、居眠りから覚めたばかりでいくらか判断力が落ちていたのかも知れなかった。
「なぁ、この続きは2階でやらないか?」
塾の建物の2階は、職員の休憩室になっていた。塾長の夫が生きていた頃、徹夜で事務や授業の準備をする時に、仮眠するのに使っていたとかで、事務机の他古いシングルベッドも置いてあった。そこに生徒を入れることは、勿論NGだった。
「ここより大きな机があるし、愛菜ちゃんが勉強している間、僕は休ませてもらうよ。質問があったら声を掛けてもらえば…」
「…いいの?」
「塾長や他の子にはナイショだけどな」
私は愛菜香を連れて2階に上がり、彼女を事務机に座らせると、自分はベッドに座ったが、すぐに耐えられずに横になってしまった。
そして…目をつむり、少しウトウトし始めた頃だった。
すごく温かく、いい匂いのする物体が顔に近づいて来たと思ったら、とんでもなく柔らかい物が、私の唇に触れた。
「!」
私が驚いて身体を起こすと、愛菜香が慌てて机に戻るところだった。
「愛菜ちゃん、今、何した?」
「ん~?」
愛菜香は一心に机に向かっているフリをして、とぼけている。
『間違いない。今のはキスだ。でもなぜ…?』
まともに問い詰めても、愛菜香は恥ずかしさからとぼけ続けるかも知れない。
そこで私は一計を案じ
「今のは…愛菜ちゃんのイタズラかな?指で僕の唇にふれたんでしょ?僕が、勘違いして驚くと思って…」
すると愛菜香は勢いよく立ち上がり
「違うよ!今のはあたしの、大切な…」
「そんな大切なもの、なんで僕なんかに…」
私が責めるように聞くと、愛菜香は恥ずかしそうに俯いていたが、やがて絞り出すように
「あたしっ… 先生のこと、好きになっちゃって… 今日だって、先生すごく疲れてるのに、こんな時間まであたしのために… だからもう、ドキドキが止まらない…」と告白してきた。
嬉しかった。当たり前だ。だが同時に『だからって、手を出したら破滅だぞ!せっかく再就職できたのに!』と心の中で自分に強く警告した。
しかし…私は筋金入りのロリなのだ。こんなシチュエーションで、いつまでもガマンしていられる訳がない。
私は両手を伸ばして愛菜香を力強く抱き寄せ、唇を奪った。
※元投稿はこちら >>