再就職して最初の1週間は、午前中に教える内容や教材を確認し、通ってくる子どもたちの顔と名前、学習理解度を覚え、午後は塾長の授業を見学。塾長が女性のためか、男子より女子が多かった。
2周目は塾長に代わって半分のコマの授業を担当し、塾長に見てもらった。終わってから反省会。
3周目からようやく、ひとりで授業をさせてもらった。子どもたちはおおむね、私が来たことを好意的に受け入れてくれた。みんな内心、初老の塾長がすべてひとりでやっている状況が心配だったのかも知れない。優しい子たちだった。
その昔、大学生のときに教育実習に行った時は、それなりに女生徒から騒がれた。疑似恋愛的な事もなくはなかった。しかし今はもう、40過ぎのオッサンだ。さすがにそんなことは……あった。
その少女は、愛菜香という名で、中1だった。
この塾の授業は、最初に教科書の内容を再度説明し、それからプリント学習。机の間を回りながら間違いを指摘したり、ヒントを出したりするが、それでも時間内に終わらない子が出てくる。
最初の授業で私が「終わらない人は家でやっても、残ってやって行ってもいいぞ!」と宣言すると、さっそくその日から何人かが残った。愛菜香もそのひとりだった。
そして回を重ねるごとに、残るメンバーが固定して行き、授業のプリントが終わっても学校の宿題などを教わって行く子も出てきた。
帰る時間は家庭事情によって様々だったが、最後まで残るのはたいてい愛菜香だった。
「君は、まだ帰らなくていいの?」
私が聞くと彼女は
「ウチ、早く帰っても誰もいないから。お母さん夜勤だし…」
と答えた。
個人ファイルを見てみると、愛菜香の母親はシングルマザーで看護師をしていた。ついでに彼女の住所を見てみると、なんと歩くと20分も掛かる。
授業が終わるのが7時。その後1時間近くやって行くので、帰るのは8時頃になる。明るい表通りを通って行ける場所だったが、まだ中1の女の子が、心細くないはずがない。
私は塾長に頼んで彼女の母親に事情を話し、彼女が最後になった時は私が車で送って行く許可をもらった。
授業中や残り勉強をやっている時の愛菜香は『ずいぶん熱心な子だな』といったイメージだった。ところが送りの車で私と二人きりになると一変し、私のプライベートな事をアレコレ質問してきた。
結婚してるの?彼女はいるの?元カノとかは? 私がいずれもいないと答えると不思議そうな顔をしたが、今度は休みの日に何してる?とか好きな音楽は?など。
あまりに質問が続くので、私はおかしくなって
「こんなオッサンのこと、そんなに聞いてどうするんだ?」と尋ねると
「えーっ?トシなんか関係ないよ。せっかく知り合ったんだから、先生のこともっと知りたい!あたしのことも聞いてきてもいいよ?」と言った。
愛菜香のプライベート。知りたくない訳がない。可愛いい子だし、性格も真面目で素直そうだ。こんな子が実際、どの程度性に関心があり、経験しているのか?
高校生の頃からずっとロリコンをやってる私だが、実物のJCがどんななのか、何も知らない。
だからと言っていきなり、性知識のことを話題にする訳にはいかないので、まずはオウム返しに「彼氏はいるの?」あたりから。
愛菜香は「いないよ。小学生の時、男子からコクられて付き合ったけど、2~3回デートして、自然消滅。」と答えた。
まあ小学生じゃ、そんなもんだろうと思っていると
「中学に入ったら、いきなり勉強について行けなくなって、それどころじゃなくて。塾のおかげで最近やっと落ち着いてきたところ」と言って笑った。
そんな会話を続けながら、私たちは少しずつ親しくなって行った。
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