愛美は生まれて初めての苦悶の中で、7分を過ごした。
限界だわ..と何とも思い、この度にお腹が捩れるような苦痛の中で、腸内で何かがぐるぐるぐると音をたてるように動き、その後僅かな平穏が訪れる。
しかし、また直ぐに前回を上回る苦痛が襲ってくると言うパターンを繰り返し味わった。
「遥..、◯◯◯..」
と雅代おば様が息子に何かを命じたような気がしたが、もう愛美はそれを聞き取る余裕も無かった。
恋人の手が、極度の緊張で硬直した愛美の身体に触れた。
脇に手を入れて身体を起こしてくれてるようだ。
それが分かった愛美は、自分から動いて協力しようとしたが、下手に動くとアナルの括約筋を絞める力が弛んでしまいそうで、情けないが下半身を動かせない。
恋人の逞しい腕が、愛美を抱き上げた。
「愛美ちゃん。良く耐えたね。
トイレまで連れて行くから。」
遥君..、助けてくれるの..?
こんな情けない私なのに..。
恋人が助けてくれるのは本当に嬉しいのだが、今の愛美は、遥君に抱き上げられたままで漏らしちゃったら...、と言う畏れで心臓が鼓動を止めそうだった。
遥君は世界一きれいな天使。
それを私の世界で一番汚いからもので汚しちゃったら..。
私、本当に死ななくちゃ..。
遥から抱き上げられて、トイレの便座の前に下ろされたほんの1分足らずで、愛美の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
しかも愛美は、自分がもう便座の前に下ろされたことすら、混乱して分からない。
「愛美ちゃん、座って!
ここ、トイレだよ!」
恋人からそう言われても、便座の前で立ちすくんでいた愛美の頭の中は、出しちゃだめ..、死んでも..、と繰り返し自分に言い聞かせてるだけだった。
それが恋人の声がして、身体をぐるっと回され、肩を押さえられてからやっと、自分が便座に座らされた事を知った。
「もう良いんだよ。愛美ちゃん!
出しちゃって良いんだ!」
えっ、良いの?
私、うんこしても、良いの?
やっとそこまで理解出来た愛美だったが、同時にその場に恋人が居て、自分を見守っていると言うことも理解してしまった。
出しちゃったら..、私のうんこするのを..見られてしまう..。
そしてまた愛美の苦悶が始まった。
「うっ、ううう..」
便座の上にしゃがんだまま、愛美は呻くように泣いた。
見守っていた遥はそんな愛美を、なんて可愛いんだ..とぼーっとしばらく見つめていた。
しかし、幸い遥にはこんなアブノーマルな状態の中でも常識と思いやりがあった。
僕は見たいけど..、愛美ちゃんにとっては酷過ぎるだろうな..。
ちゃと自分の頭で、そう判断できたのだ。
「愛美ちゃん。
僕はあっちに行ってるから..。
もし、何かあったら呼んでね。」
こう言うと、そっとトイレのドアを閉めてあげた。
遥がトイレのある場所から廊下を曲がって直ぐ、トイレの方から激しく水音と、愛美ちゃんの「ワーン」と小さな子供のような泣き声が聞こえてきたのだった。
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