「だいたい分かったわ。
でも、一度私を愛美ちゃんと会わせて。
一人で私のところに寄越してちょうだい。
その時は、まだ息子には会わせないから。」
冴子は雅代の言う通りにすると答えた。
次の週末、遥は剣道の試合のために早朝から不在だった。
それでもちゃんと、雅代の朝食を用意してくれていた。
お昼にお客様が来るからと伝えておいたから、ちゃんと二人分の昼食まで用意されている。
私には、出来すぎた息子よね..。
さて、冴子の秘蔵っ子は、どんな娘さんかしら?
約束通り10時ちょうどに、愛美は来一人で来た。
ドアを開けた途端、雅代はドキッとした。
人違いいじゃないかしら?
写真では、もっと地味な..、平凡な女の子だったような気がしたんだけど..。
そこには、セーラー服を着た女の子が立っていた。
写真のとおりメガネを掛け、髪はショートカットで、背も低い。
セーラー服の上から見ると、身体の発育も良い方ではないようだ。
思春期の少女と言うより、まだ幼児体型を残した子供そのものだった。
それなのに、雅代はその子から鮮烈な印象を受けた。
メガネの奥の目は、この子がとても知的な考え方をする事を示しているし、引き締めた唇は意思の強さと忍耐力を示している。
そして、顔全体の表情からは、自分に課せられた重要な任務を遂行しなければ..、と言う決意が感じられた。
それなのに、その決意は堂々とした感じではなく、むしろ悲壮感に満ちた感じだった。
雅代は愛美を家の中に導いた。
「楽にして。
息子は今日はいないの。
私だけよ。」
冴子から、全ての男を拒絶している、と聞いていたから、少しでも気持ちを楽にさせようと思ってこう言ったのだが、愛美の張りつめた表情は変わらなかった。
それでいて、挨拶はきちんと出来るし、受け答えは標準以上にちゃんとしている。
なるほど。冴子の秘蔵っ子だわ..。
感心した雅代が、愛美に、
「貴女のお母さんから、今日私のところに来るのに、何と言われたの?」
と聞くと、彼女は硬い表情のまま
「あちらのおばさんの言うことは、私から言われたのと同じだと思って、何でも従いなさい。たとえ恥ずかしいことでも..、と言われています。」
と答えた。
まあっ!冴子ったら、こんな子供になんて事をいうのよ。
雅代の友人に対する腹立ちは、自然その娘向かった。
「私が命令したら、貴女は何でもそれに従うわけ?
死ねって言ったら、死んじゃうの?」
我ながら意地悪な質問だと思った瞬間、その質問は、自分が息子にしたのと同じ質問だと気がついた。
そしてその質問に対する愛美の答えも、
「はい、その時は私死んで、お母さんの言い付けを守ります。」
と言うものだった。
ああ、遥!
雅代は心の中で、今はここにいない息子の名前を呼んだ。
そして、こんなことさせちゃ駄目なのに..、と言う自分の良心に逆らって、愛美に裸体となるよう命令したのだった。
「はい..。」
愛美は立ち上がると、その場でセーラー服を脱ぎ始めた。
息子と..、同じだわ..。
一つ違うのは、遥は辛さを表情に全く現さなかったのに、この少女は顔が真っ青になっている。
良く見たら、スカートのサイドファスナーを下ろす指先も細かく震えていた。
女の子なんだわ..。
そして、心は遥と同じ。
遥だって、私の命令なら、冴子の前で裸になるでしょう..。
そう思ったら、遥に対するのと同じように、目の前の愛美が愛らしく思えて仕方なくなった。
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