電車がふた駅分進むのを待って、俺とMがトイレから出てみると、なんとYと葵が、ベンチ席に並んで座っている。Yは葵にスマホの画面を見せながら、優しそうな笑顔で何か話しかけていて、葵はそれに真顔でいちいち頷いている。その姿はまるで、塾の講師とかが子供に勉強を教えているように見えた。
間もなく、葵が降りる駅に着いた。葵は黙ってスッと立ち上がり、電車を降りるとフラフラとホームを歩いて行った。
少し離れて見ていた俺達は、Yに近づき
「大丈夫か?口止めは?」と聞くと、Yは「ああ、間違いない」と自信ありげに言った。
その後、適当な所で降りて、3人で祝杯を上げた。Mは永年の夢が叶ったと、俺達に何度も礼を言った。
俺はYに、「葵ちゃんと、何話してたんだ?」と聞いてみた。とても、普通に動画で脅しただけには見えなかったからだ。
Yは、「なに、営業トークの応用さ」と前置きしてから、葵との会話を要約して話してくれた。
その内容を簡潔にまとめると、こうだ。
《今日君は、僕の仲間に触られて、発情しちゃったね?いや、それは決して悪い事じゃない。君の身体が大人の女性に近づいている証拠さ。
でも男は、目の前で女の子が発情したら、セックスしたくなる。でなきゃここまではしなかった。けど、12歳の君がセックスを経験したのも、悪い事じゃない。君も中学に入れば、彼氏が欲しくなるかもしれないが、その年の男子は性にガツガツしているから。君は彼らより一足先にセックスを知ってる訳だから、相手が身体目当てかどうか、冷静に見極められる》
俺はこれを聞いて、舌を巻いた。冷静に考えれば、ひどく男の身勝手な理屈だが、見るからに暗示にかかりやすそうな葵なら、この通りだと信じ込み、2~3年は気付かないかもしれない。
『コイツひょっとして、この調子でJSとかを口説いてヤッてるんじゃ?』
Yは俺やMと違ってイケメンだし、金に余裕もある。SNSとかでJSを引っ掛けてセックスに持ち込んでいたとしても不思議じゃない。もしそうなら、なぜこんなリスクを冒してまで、俺達のN研狩りに参加してるのだろうか?
いずれにしても、2週間ほどほとぼり冷ましをした後は、次はYの番だ。
12人のN研少女から、Yが陽菜と葵と、あとひとりを選び出した日。Yが自分で調査し、推した少女は、名前を凛といった。この子だけは、本当の名前が判明していた。Yが撮った動画に、偶然彼女のスマホの画面が写り込んでいて、ラインで彼女が友達からそう呼ばれていたのだ。
俺は正直、この子だけはターゲットにするのは気が進まなかった。
彼女は、どの動画を見ても、取り巻き的な女子何人かに囲まれ、話題の中心になっていた。学校なら学級委員長、部活なら部長とかをやってそうなタイプだ。
こういう子は大人に対して物怖じしないし、正義感が強いので、痴漢とか遭ったら迷わす『この人痴漢です!』と大声を出しそうだ。
俺が不安そうにしているとYが
「お前の言いたいことは分かるよ。これは俺の持論だけど、こういう生きる活力に溢れている子は、性欲が強い。普段は隠してるけどな。この子に、自分から『欲しい』と思わせられたら、脳内麻薬で訳がわからなくするより、もっとやり易くなるはすだ。」
「…なるほど。もしそうでも、どうやって『欲しい』と思わせる?」
「それについては俺が責任を持つよ。お前たちは壁になってくれるだけでいい。もし凛ちゃんが騒いだら、他人のフリをしてくれ。」
Yにそこまで言われては、それ以外反対できなかった。
従って、この凛という少女をカコむ具体的計画を立てる際も、この線に沿って進めることになった。
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