両親に交際を認めてもらった日の、次の週末。兄はついに、中学の時の同級生で同じ高校に進んだ友達3人に連絡を取り、近所のファミレスに集まってもらった。
兄がどうしても不安だと言うので、私も付いていくことにした。
3人のうちのひとりは、兄のゲーム友達でもあり、不登校になってからも時々連絡を取り合ってたらしい。家に遊びに来た事もあり、私とも面識があった。
私たちがお店に入り席に着くと、その友達が私を見て
「あれ?その子、お前の妹だったよな?」
と聞いてきた。すると兄がなんと
「妹だけど…今はカノジョなんだ」
と言い出した。こんな展開は全く予想していなかった私は、恥ずかしさに顔を赤くして俯くしかなかった。
みんなの視線が私に集まる。
でも私にはすぐ、兄の気持ちが理解できた。兄は、ゲームの誘惑に負けて不登校になってしまったことで、この人達に引け目を感じていたのだ。それで、努力してダイエットに成功してスッキリした姿を見てもらい、さらに私というカノジョができたことを報告して、やっと高校へ戻る相談をする気持ちになれたのだろう。
そういうことなら私はこの場で『そうです。私、お兄ちゃんのカノジョになりました。』と言ってあげれば良かったのだが、恥ずかしくてどうしてもできなかったので代わりに
「彩夏といいます。宜しくお願いします。」と挨拶した。
するとなんと、兄の努力に感動した3人が一斉に拍手で祝福してくれたので、私達は店中の注目を集めることになった。私は今度こそ、その場から走って逃げ出したくなった。
その翌週から兄は、高校へ行き始めた。最初は勉強の遅れを取り戻すのに苦労したようだが、その年の終わり頃には普通に授業について行けるようになった。
あれから3年。今私は高1、兄は今年から、県内の大学に自宅から通学している。私達の関係は変わらない。
私は兄が言うほとの美少女ではないが、それでもこの3年間、兄以外の男の子といい雰囲気になったことはある。一方兄の方は全くブレずに、私だけを想ってくれていた。兄の成績なら本来、東京の有名私立大学にも行けたのに、私と離れたくない一心で、地方の平凡な大学を選んでしまったのだ。
そんな兄を裏切って他の男を好きになったりしたら、どれほど悲しむか。それを想像しただけで涙が出そうになるので、気になる男子が現れても自分で心にブレーキをかけるしかなかった。
この先私の家族は、どう変わっていくのだろうか?もしかして、ずっとこのまま4人家族なのかもしれない。いずれ時期が来たら兄と入籍して、でもそのまま、この家で両親と一緒に住み続けて…
13才で、異性としては好みのタイプではない兄のカノジョになり、他の男を知らずに結婚というのでは、私の青春、寂しすぎる気もする。
でも私は、なんだかんだ言ってもこの家族が大好きなのだ。他の家と比べて10年も遅く家族になった分、兄と夫婦になることで、長く一緒にいられるのなら、それも悪くないかな、などと思ってみたりするのだ。
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