理絵のマンションから帰った時には既に薄暗く、母親は相変わらず仕事に出ていた。居間には琢郎が一人雑誌を読んでおり、母親が買い置きしてあったカップラーメンの残骸もそのまま。
「ただいま。兄ちゃん」
「おぅ、帰って来たか。オメェさ、またちょっと手ぇ貸せよ」
「またぁ?」
テレビを点けていない夕方の部屋は静か過ぎて、久美子は時間が止まっているように感じた。夕日が白い団地の壁を染め、そのオレンジ色が薄暗い居間に満ちてゆく。部屋の真ん中で大の字に寝そべる、そんな琢郎の汗ばんだ下半身は露わ。
「おぅ、もうちっとゆっくりやれよ」
素直に頷き皮に隠された亀頭の辺りをゆっくりとなぶると、彼の呻きがひと際大きく響いた。下半身裸で無防備な姿となった兄。額に汗を滲ませ眉間に皺を寄せ、ギュッと目を瞑る兄を、久美子はこの時ばかりは可愛らしくすら思える。
「兄ちゃん、出るときは言ってよ。こないだみたくイキナリ出して、あたしの服に着いちゃったりすんのイヤだから」
「っせーな黙ってやれよ、気が散んじゃねぇか」
覗き込めば雑誌のグラビアページの際どい水着。
「このひと、胸おっきいね」
「あぁ、オメェとは大違いだな」
妹の手の中で琢郎のペニスは充血し、固く脈打っている。
「あたしだって、これからどんどん大きくなってくんだから。ていうか兄ちゃんがただの巨乳好きなだけなんでしょ」
「うっせぇよ、この幼児体型が……あっ」
先端を親指で強く押す。まるで聴力検査のボタンを押すかのように。それに反応して腰を跳ね上げる兄を、久美子は時折楽しんでいた。彼女は兄の苦手な所、感じる所、全てを知り尽くしつつあった。
二人は決して一線を越えようとはしない。女の手でした方が気持ちいいからと言うだけの琢郎と、兄の命令に従順なだけの久美子。妹をオナニーの道具ぐらいにしか思っていない、ただそれだけであった。
「なぁ久美子、オメェ、フェラチオって知ってんか?」
「知ってるよ。口でするやつでしょ?」
「ちょっとやってみろよ」
「え……いや、兄ちゃんそれはちょっと。やり方だって知んないし……」
「なんだよ、俺の言う事聞けねぇってのかよ、あ?」
「だって、そういうのって、恋人同士がするんでしょ?」
「ごっこだよ、ごっこ。いずれ大人んなったらオメェだって男のチンコ咥える時が来んだから、練習しといた方がいいに決まってんだろ?」
そう言うと琢郎はむくりと起き上がり、人差し指と中指を妹の鼻先に突きつける。
「口、開けよ」
久美子はその小さな口を少しだけ開く。
「もっとだよ。アーンてしてみ、アーンて」
「あー……ごっ」
目一杯口を開いた瞬間、二本の指が強引に突っ込まれた。
「歯を引っ込める感じで、唇だけすぼめんだよ」
「あがー、ぐぶっ」
鼻でしか息が出来ない苦しさ。口の中に広がる異物感。嘔吐したくなるような感覚。目尻から涙が滲む。頭を後ろに引こうとするも、琢郎の左手が彼女の後頭部を押さえた。
「もうちょっと我慢しろ」
「んふー」
久美子が咥え込んだ二本の指は、上顎の裏側から歯茎まで愛撫するかのように蠢く。溜まった唾液がじゅぶじゅぶと音を立て、溢れた唾液が唇の端から顎、首筋へと垂れてゆく。
「お、これは舌だな」
「んんーっ、んんーっ」
久美子の鼓動は早くなり、鼻から抜ける息は荒く、苦しさから涙を滲ませた瞳は一層潤んでいた。口の中が刺激され続けるごとに、下半身に芽生えた疼き。身体の芯が熱くなるような感覚。頬が紅潮しているのは、全身が熱を帯びているからに他ならない。
「ふんっ、んんんー」
「……オメェまさか、感じてんのか?」
必死に首を横に振る。本当は身体中が疼いて疼いて仕方ないのだが、その感覚が何なのか彼女はまだ知らない。自然と顎が上がり、身体から力が抜けてゆく。その恍惚とした妹の表情に琢郎はドキリとした。
「んばっ、はぁ、はぁ、はぁ」
「気持ち……いいんか? 俺、口ん中に指突っ込んだだけだぞ」
「んっ、わかん……ない。けど、なんかドキドキして、急に力が抜けちゃって……」
「やっぱ思いっきし感じてんじゃねぇか。マジかよ」
まだ子供だとばかり思っていた久美子は、初潮も迎え女の身体へと成長していたのだ。琢郎が狼狽えたのはしかし、その予想外な反応に対してよりも、そんな妹の姿に興奮してしまった自分に対してであった。下半身が、痛いくらいに勃っていた。
「じゃ、じゃぁ今度は本番な。チンコ咥えろ」
「手じゃだめ?」
上目使いに見上げた先には、兄の血走った鋭い目。その交わる視線を断ち切るように下を向けば、目と鼻の先にまで熱気の立ち昇る兄のペニスが迫っていた。
「……じゃぁ、ちょっとだけだよ」
久美子はまるで口づけをするかのように、震える唇でそれに触れる。鼻腔を衝く汗の匂いを嗅がされながら、舌を出して粘液の滲み出る尿道を舐めてみた。頭の上から聞こえる琢郎の荒い息遣い。
「なんか苦い」
ねだるかのように鼓動に合わせ揺れる亀頭。小さな口を思い切り開け、それを含んでみた。
「ん……」
指とは太さも匂いも全然違う。
「あったけぇ」
「んんー……ばっ」
思わず吐き出し、頭を上げてしまう久美子。
「なんだよ、もうちょい我慢しろよ、使えねーやつだなぁ」
「これキツよ兄ちゃん」
「慣れだ慣れ。何回かやってく内にオメェにもちゃんと出来るようになんよ」
「……リエちゃんなんかは、もうこういう事もしてんのかな」
「初体験済ましてんなら、当然やってんだろ」
それは琢郎の想像だった。
街は朝から三十度近くにまで上がり、強い日差しと蝉の声が降り注ぐ。
「キモいヤツだったり怖そうな人だったら、スッポかしちゃえばいいし」
そう言う理絵は淡いピンクのキャミソールに黒のミニスカート姿で、少々緊張している面持ち。赤いTシャツにホットパンツ姿の久美子は、そんな彼女を女の子っぽくて可愛らしいと思った。待ち合わせ場所の駅前ロータリー。狭い路地に身を隠しながら、人ごみの中に目印の赤いキャップとサングラスの男を見つけた。
「あれかな。あの白Tシャツとジーンズの」
彫刻の下に立っていた二十代後半ぐらいの男は落ち着いた雰囲気で、意外と普通のサラリーマンといった印象だった。
「あ、あのー……山下さん、ですか?」
「ああ、君が理絵ちゃん? そっちの娘が言ってた友達かな?」
久美子は理絵の背中に隠れるようにしながら、軽く会釈する。
「しかし暑いね。とりあえずエアコン効いてるとこ入ろうか」
二人は男の先導で駅前のファミレスに入った。理絵はSNSでかなり話し込んでいるらしく既に打ち解けており、久美子を安心させた。
「この山下さんてね、超ロリコンなのー」
「ハハ、理絵ちゃん、あんま大声で言わないでよ」
「小学生の写真とれるなら、いくらでもお金出すっていきおいなのよねー」
「いくらでもって、そりゃそうかも知んないけど、色々条件も増えて行くからね」
「条件て、どうせエロい条件なんでしょー」
「ハハハ、やっぱ分かる?」
理絵と同様に開けっ広げで明るい感じの人だと久美子は思った。同時にお金のために脱いじゃうんだと彼女に対して驚きを覚え、なんだか悪い大人に見えてきた。
さすがにラブホテルなどには小学生を連れ込めないという事もあり、山下は駅から程近いシティホテルに部屋を取っていた。受け付けの人にはどんな風に見えているのか、しかし山下の挙動は終始堂々としたものであった。
真昼のホテルは小さな窓から柔らかな光が差し、蝉の声も入って来ないとても静かな空間だった。冷蔵庫から出した缶ジュースを飲みながら所在無げにしている久美子に、山下が話し掛ける。
「久美子ちゃんて言ったっけ、君はエッチな経験とかあるの?」
「え? いや、そんな、ないです」
「そうかぁ、意外と君みたいな大人しそうな娘ほど、色んな経験してると思ったんだけどな」
「えー山下さん、それってアタシみたいのは意外でもなんでもないってこと?」
「いや、そう言う訳じゃないけどさ。ちょっとベッドの上に立ってくれるかな」
会話しながら山下はもう、カメラを用意し始めていた。
「いいねー可愛い洋服だね。すごく似合ってるよ」
理絵はアイドルか何かにでもなった気分で浮かれていた。時折ストロボの光。シャッター音がせわしなく鳴り響く。
「理絵ちゃんの初体験の相手って、どんな人なの?」
「ネットで知り合った大学通ってるひとで、カッコいい人だったよ」
「ふーん、僕と違ってイケメンなのか。あ、膝に手ついて少し屈んだポーズして」
「あたりまえじゃーん、でも山下さんも悪くないよー」
「ハハ、それは光栄だねぇ。もうちょっと屈んで」
「えー、パンツ見えちゃうよー」
「いいじゃん、可愛いパンツ穿いて来たんでしょ?」
山下は床に跪いてローアングルでカメラを構える。そんな二人のやり取りを、久美子はソファーに座りながら興味深げに眺めていた。その視線に気付いて山下が声を掛ける。
「久美子ちゃんもさ、一緒に写ってみない?」
「え、あ、あたしはべつに……」
「クミちゃんも来なよー、たのしいよー」
普通に撮られるだけなら別にいいかも。抵抗も有ったが、二人の様子を見ている内そう思うようになり、ソファーから立ち上がった。
「じゃあ、そこに並んで」
ベッドの上で肩を並べる。緊張しきった久美子は全身に力が入り、その立ち姿はぎこちない。
「そうだな、二人、手繋いでみようか」
それは久美子をリラックスさせるためであった。理絵は繋いだ右手に汗を感じ、彼女を見つめて微笑む。
「キンチョーしてんね、クミちゃん」
「いいねー、二人とも可愛いよー」
久美子も悪い気分はしなかった。手を繋ぎながらすっかりモデル気分の理絵につられるように、撮られる事で自意識が満たされてゆくのを感じる。
「じゃぁ理絵ちゃん、チラッとスカート捲ってみよーか」
「山下さんのエッチぃ」
「男はみんなエッチなんだよ。理絵ちゃんにはチラリズムなんて言っても分かんないかも知んないけどねー」
「こんなかんじ?」
左手でスカートを少し捲り上げれば、ミニスカートから真っ赤な下着が顔を覗かせる。
「いいじゃん、いいじゃん、黒と赤のコーディネートが大人っぽいよ」
「へへへー、今日のために買ったんだー」
「うわー、ほんとに大人っぽいね、リエちゃん」
久美子は彼女の下着を驚いた顔で覗き込む。
「いい店見つけたんだ。こんどいっしょに買い行こ」
「あ、久美子ちゃんそのまま、理絵ちゃんの腰の辺りにしがみつく感じで」
いつの間にか、二人の撮影会になっていた。理絵にとっても久美子が隣に居てくれる事で、不安を感じず大胆な気分になれる。
「久美子ちゃん、ピース」
久美子は理絵の下着の前でピースする。二人ともそんな悪ふざけが楽しかった。
「じゃぁさ、久美子ちゃんが理絵ちゃんのスカート、捲ってあげて」
「んーと、こんなかんじ?」
「キャハハ、クミちゃんそれ上げすぎー」
「だって、分かんないんだもーん。えいっ!」
「キャッ!」
思いっきりスカートが捲れ上がり、理絵の臍が顔を出す。
「やったなー、クミー」
「へへへー、あたしスカートじゃないしぃ」
二人がじゃれ合う間もシャッターは切られ続ける。部屋はいつしか三人の笑い声に包まれていた。
「クミちゃんもパンツ見せろー」
「アハハ、やーめーてーよー」
ホットパンツのボタンとジッパーを理絵に外され、顔を覗かせたのはブルーのストライプ。
「あー! クミちゃんかわいいパンツはいてんじゃーん」
「えー、子供っぽいよぉ」
ベッドに尻餅をつきながら両手でその下着を隠そうとしたら、悪戯っぽい笑顔の理絵にするするとホットパンツを脱がされてしまった。
「そんな事ないよ久美子ちゃん。かわいくて似合ってるって。ブラもかわいいの付けてんでしょー」
「あたしグレーのスポーツブラだから、ぜんぜんかわいくないよ」
「あ、久美子ちゃんのスポーツブラ見たいなぁ。結構スポーツブラとか好きな男も多いんだよ」
「山下さんはロリコンだから、そーゆーの好きなんじゃないの?」
「バレた? ハハハ」
「じゃぁ、リエちゃんといっしょなら、見してあげてもいいよ」
「えー、アタシも脱ぐのー?」
「そうだね、思い切って二人とも脱いじゃおっか。そんで下着の見せ合いっこしなよ」
明るく軽い調子の山下に、すっかり警戒心を解いてしまった二人。ベッドの上で、二人はそれぞれ着ている物を脱ぎ捨て下着姿となった。
「うわ、リエちゃん胸おっき!」
「クミちゃんはスポーツブラで締めつけてるから、おっきく見えないだけだよー」
胸も尻もまだそれほど発育していない二人の肢体が、シャッター音とともに山下のカメラへと収められてゆく。
「二人とも綺麗な体してるじゃん。ちょっと並んで立ってみて」
並んで見ると理絵の方が少し背が高く発育も良かった。
「あたしも早くリエちゃんみたいになりたいなぁ」
「大丈夫だよ。久美子ちゃんも色んな経験積んで行けば、どんどん大人ぽくなってくから」
久美子は手で自分の胸を持ち上げてみた。その小さな膨らみを理絵が突っついてみる。
「やっぱ締めつけられてるだけで、けっこーあんじゃーん。ちょっとクミちゃん、このブラめくってみ」
「やだよ、はずかしーし」
「大丈夫だよ久美子ちゃん。向こう向いて、こっちにお尻向ければ僕からは見えないから」
そう言った山下は終始優しい笑顔を絶やさない。久美子が顔を赤くしながら小さく頷き彼に背を向けると、理絵の前でスポーツブラを捲り上げた。すると小さな乳首が申し訳なさそうに顔を出す。淡いピンク色をしたそれは、乳輪と乳頭の境界線も曖昧。
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