僕たちは宿に着くと、とりあえず一度、男女に分かれて温泉に入り、それから食事を取った。部屋割は両親の部屋、兄一家の部屋、僕の部屋と3つに別れていたが、両親の部屋が一番広かったので、食事はそこに集まってみんなで食べ、父と兄夫婦はビールも飲んだ。
それからもう一度みんなで温泉、の予定だったのだが、メイがスマホゲームに熱中していて母親に声を掛けられても動かない。
「メイ、早くしなさい!」
「ん~?これ終わってから~」
「そんなこと言って!みんなに迷惑でしょ!」
そんな母子のやり取りを聞いて僕は、両親の前で言い合いさせるのもよくないと思い、
「あとで僕が連れて行きますから」
と言った。それを聞いてメイが、『ニヤッ』と笑ったような気がした。
ところが、両親と兄夫婦が部屋を出てから20分過ぎても、メイは一向にゲームをやめない。やがて兄夫婦が戻って来て、母親に「いい加減にしなさい!」と叱られるとようやく
「はぁい、サトシ君いこ!」
と言って立ち上がった。
温泉に連れてゆくと言っても、メイはもう5年生だ。当然女湯にひとりで入るものと思っていた。ところが、温泉入り口の男湯、女湯の暖簾の間に立てられた看板を見て、メイが「あれっ?」と言った
。
「何?」
「ここ、ネンレイじゃなくて身長だけなんだ。130センチだって。」
見るとその看板には、「130センチ以上のお子様の混浴はご遠慮ください」とだけ書いてある。
「あたし、129センチ。やった!チャンスじゃん!」
「チャンスって、何が?」
僕がドギマギしながら言うと
「え?だってサトシちゃん、あたしのハダカ見たいでしょ?」
僕が答えに窮して固まっていると、その間にメイは、スタスタと男湯へ入って行ってしまった。
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