「先生あたし、家庭教師付けられちゃうみたい」
真由が沈んだ顔で話し出した。
「いいじゃないか。親がお前の勉強にお金を掛けてくれるんだから、ありがたい事だと思うぞ?」
僕がそう言うと、
「だって、コイツだよ?」
真由が、親が選んだ大学生の写真を見せた。太った、銀縁メガネを掛けた長髪の男子学生。真由の憂鬱の理由が分かった。
「そいつ、絶対ロリコンだよ。そんなのと部屋で二人切りになったら、レイプされちゃうかも…」
僕はロリコンとレイプという言葉にドギマギし、それを顔に出さないようにするのに苦労した。
「そんなこと言ったら失礼だぞ?お母さんだっているんだろうし」
「あたしの部屋2階だもん。口とか塞がれたら、下じゃ分かんないよ」
僕は、真由が拘束されてキモデブ男に犯される場面を想像し、思わず股間が熱くなった。
「…そんなにイヤなら、俺が教えてやろうか?」
「社会はいいの!あたし成績悪くないでしょ?英語と数学だよ…」
そう。僕は社会科の教科担任で、いつも僕の授業を熱心に聞いている真由は、社会科の成績はクラスでも上位だった。
「俺だって学生の頃は、家庭教師で英数教えてたんだぞ?」
そう言うと、真由の顔がパアッと明るくなり
「じゃあ、先生が家庭教師に来て!」
と頼んできた。
「あのなぁ、学校の先生ってのはアルバイト禁止なんだぞ?生徒の家に教えに行ってたら、一発でクビだよ」
僕はその時、真由に居残り勉強させる事をイメージしていた。クラス担任でもない教師が放課後個別指導していたら、見咎められるかも知れないが、まぁ許容範囲だろう。
ところが真由は
「あ、じゃああたしが先生の家に教わりに行けばいいんじゃない?」
と言った。
実は僕は、真由が職員室に通ってくるようになってから、繰り返しそんな場面を妄想し、ズリネタにしていた。
なので、とっさに絶句してしまった。
「バ、バカだなぁ、そんなのお前のお母さんが許すハズないだろ?独身男が一人暮らししてる部屋だぞ?」
僕がそう言うと、真由はニヤッと笑い
「お母さんがいいって言ったら、先生の家で教えてくれる?」
と聞いてきた。
僕は、親がそれを許すなんて有り得ないと思いながら
「ああ。もしいいって言ったら、いくらでも教えてやるよ。だが俺の指導はスパルタだぞ?」
と言っていた。
その晩、真由の母親から携帯に電話が来た。僕は、クレームの電話だと思って身構えた。
『たとえ冗談でも、独身男性の一人暮らしの家に、年頃の娘を誘うなんて!』と。ところがなんとそうではなく、『お礼の電話』だった。
「先生がうちの子の勉強を、個別で見てくださるって、本当によろしいんですか?」
母親の声は弾んでいた。明らかに僕の申し出を喜んでいる。だが、母親にどこまで正確に伝わっているか分からないので
「真由さんはとても勉強熱心で、よく職員室に質問に来るんです。そういう生徒の力になるのも教師の役目ですから」
と、当たり障りのない返しをすると
「でも、先生のご自宅でなんて、ご迷惑じゃないかと…」
『ちゃんと伝わってる!』僕は呆気にとられた。娘が独身男性教師の家に、ひとりで行く。それを分かっててこの母親は喜んでいるのだ。僕の頭に『天然』という言葉が浮かんだ。
真由がニヤッとした理由も、これで分かった。
こうして、次の土曜日から、真由は僕のアパートに通ってくることになった。
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