真由の家に呼ばれた日の次の土曜日、真由が僕の部屋に来た。
受験対策ということで、この日から土日ともに個別指導ということになったが、この日は、真由の母親の前で約束したことについて話し合わなければならないので、勉強は休みにした。
「先生、この間はゴメンね。お母さんったらいきなりあんなこと…」
「ああ、ビックリしたよ。でも、交際を認めてもらえて良かったな」
「でも…」
「ん?」
「あたしが16になったら、なんて…」
そう。真由は、僕が母親の前で『責任を取る』と言ったことを気にしているのだ。それはつまり、その時が来たら真由を嫁にもらうという意味だ。
「あれ、本気にしていいの?」
「ああ。俺はそうしたいと思ってる。でもそれは、高校卒業してからでも、真由が就職して社会人になってからでもいいし、もしその時になってお前が他の奴の方がよかったら…」
「そんなのありえない!ずっと先生が好きだもん!」と真由が叫んだ。
もちろん僕としては、真由の言葉を信じたかったが、精神的に成長途上にある彼女の想いが5年、10年後も変わらないなどと、とてもあてにできない。
「そうだな。ふたりともずっと、同じ気持ちでいられたらいいね」
僕はそう言うのがやっとだった。
「高校卒業したら…くらいかなぁ」
「大学は?」
「わかんない。その時にならないと…大学生と主婦、兼業でもいいかも…」
夢みたいな話だが、僕が公務員で、真由の親の援助も受けられるなら、絶対無理とも言えないだろう。
「…そしたら…それまでは、フィアンセだね、あたしたち」
真由はフフッと笑った。僕は調子に乗って
「そうだな。フィアンセになった所で、そろそろどうかな?」
と聞いてみた。当然、真由はイヤイヤをするものだと思っていた。
ところが真由はなんと
「うん。あたしもそう思って…」
と呟くように答えた。
僕は急に、ドキドキし始めた。
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