「ひギッ!」
奇妙な悲鳴と共にアオイは正座したまま俯伏せに、、あたかも亀のように躯を丸めていた。
顔と上半身の前面だけを隠すかのように、震えながら躯を縮めた少女。
蒼白な顔を引攣らせ、眼を見開いたまま震え続けているアオイの姿を見詰めていたミドリは、不意に踵を返し、その姿を消す。
・・行ってくれた・・。
今の姿を誰の眼にも触れさせたくない。
・・行ってしまった・・。
誰でもいいから助けて欲しかったのに。
混乱の極みにある矛盾した少女の葛藤。
無理も無い。
ある意味では・・あくまでも一般論ではあるが、性被害、強制猥褻の被害としては重篤なものではなく、軽微な部類なのかもしれなかった。
だが、十二歳の女子中学生、、アオイにとっては想像を絶するレベルの被害としか感じられない。
そもそも圧倒的に性に関する知識が不足しているのだ。
かさり
身動ぎも出来ず、躯を縮める少女の耳に誰かの足音が伝わる。
二人目だ。
目撃者が増えれば増えるほど、アオイの受けた被害が世に広まる可能性は高まる。
だが、そこまで想いを馳せる余裕が少女には無かった。
単純に空気中の振動が鼓膜を刺激し、反射的に振動の生じた方向にアオイが視線を向けたに過ぎない。
そこに立っていたのは先刻、姿を消した少女、、ミドリであった。
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