アオイには女達の視線が意味するところが分かっていた。
この公園に着いてから為した行為、その全てが淫らな目的を有しており、その目的は遂げられつつあるのだ。
・・ね、あの子・・中学生くらいかしら?
・・もう一人の子は、ともかく・・
・・問題はあの男の人よね・・。
・・出会い系・・とか?
・・まさか、ね・・。
恐らくは、そんな会話が飛び交っていたのであろう。
先刻までは、だ。
・・あ。ね、今の見た?
・・見た見た、パンツ穿いてたよね?
・・あ。今度は短パン?ハーフパンツ?
・・て、ことはさぁ・・。
だが、今は俄然、女達の視線に熱が籠もっていた。
下卑た想いと興味本位の視線。
もっとも三人の行動と目的は、彼女達の想像と大きく乖離しているわけではないのだが。
ノーパンで?
鉄棒に寄り掛かっていた?
その中の何名か、或いは全員が自分達も通ってきた途として、少女が鉄棒を使って何をしていたのかの想像はつく。
だが、確信には至らず、想像を逞しくしていくのみ。
・・でも、ああいうのって・・さ。
うんうん、そうだよね・・。
・・人眼につかないっていうか・・。
うん、少なくともここじゃ、ねぇ・・。
アオイもまた想像を、いや、妄想の翼を恣に広げていた。
今、あの女達に自分がしていた行為は限りなく正確に把握されている。
だが、女達に確信は無い筈だ。
少なくとも彼女達の眼に剥き出しの下腹部を晒したわけではなく、彼女達とて一部始終を凝視していたわけでもない。
だが、もう一度同じ行為を繰り返したならば。
警察に通報されるまではいかずとも、薄っぺらな正義を標榜し、『男から少女を助ける為』の行動を起こす者がいないとは限らない。
男が去った後、女達はアオイを取り囲み、質問責めにするであろう。
大丈夫?
酷いことされなかった?
女の子なんだから気を付けなきゃ。
あの男の人は誰?
何かされなかった?
その時点で彼女達は俄仕立ての正義の味方、男は年端も行かない少女を喰いモノにする憎むべき悪鬼。
そして二人の少女、、少なくともアオイは、無知と無防備により辱しめられた哀れな被害者。
その図式に収まって好奇、同情、憐憫、侮蔑の視線を浴びつつ、今日の破廉恥な行為を告白するのも悪くない。
だが、男との関係は、これっきりになるに違いない。
更なる悦びを教えてくれる可能性のある男。
男との関係を絶つのも続けるのも恐ろしい。
それはアオイなりの思慮を巡らせている時であった。
不意に男が声を発したのだ。
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