「あっ・・。」
汚してしまった下着を身に付けている事実に、そして不愉快な感触に思わず小さく叫んでしまうアオイ。
対して怪訝そうな顔をしたミドリと思惑通りの展開を愉快そうに俯瞰する男。
「ど、どうしたの・・?」
明らかに喘ぎではない叫びを耳にしたミドリは、友人の下腹部が、自分と五十歩百歩の状態になっているとは思い至らず、理由を問う。
「・・あ、え、その・・・。」
言いたくない、言えるわけがない。
だが、言いたい。
知られたい。
今、自分の下腹部がどんな状況なのかを。
下着を汚してしまった理由を。
汚した下着を穿く惨めさを。
くつくつと男は咽喉の奥で笑う。
無知故に身繕いに失敗してしまった少女を嘲けるように。
或いは無邪気なペットの失敗を愛でながら浮かべる苦笑いのように。
「つぎはハーフパンツだ。」
「え。」
か細い悲鳴を漏らしたアオイ。
ミドリにとっては、預かっていたものを返すに過ぎないが、アオイにとっては、預けていたものを返されるだけでは済まない。
返されたハーフパンツを、淫らな汁で汚した下着の上から重ねて穿く羽目になるのだ。
はしたない上に不潔な状態。
少女の惨めな想いは募るばかり。
尿意に耐えかねてトイレに駆け込んだは良いが、微妙に間に合わず、僅かに下着を汚してしまった時に似ている。
だが、今の状況は『微妙に間に合わず』、『僅かに』どころではない。
『全く間に合わずに』人前で、しかも膀胱に溜まっていた尿の全てを『盛大に』漏らしてしまったレベルなのだ。
ぞくり。
・・・誰かに見られながら、お漏らし。
アオイは肌が粟立つような想いに襲われる。
想像してしまったのだ。
人前で。
立ったまま。
下着を穿いた状態で。
限界まで我慢した尿意を。
思うままに解放する。
甘美な妄想であった。
だが、そんなことを出来るわけがなかった。
人として、だ。
想いを振り払うようにして、友人から受け取ったハーフパンツに脚を通しながら引き上げる。
ふと視線をズラすと、先刻の母親達の数名が、先刻よりも更に密な集団となって鳩首会議を続けていた。
勿論、議題は鉄棒付近で何やら不穏な動きを見せている三人組についてだ。
制服を着た中学生らしき女子が二人と四十歳絡みの男。
どういう関係なのか。
何を話しているのか。
何をしているのか。
目的は何なのか。
その女達の視線が集中しているのは、他でもないアオイであった。
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