たった二人の聴衆。
そのうちの一人、男の顔に浮かぶのは満足げな、いや、むしろ意図した結果に状況が導かれたことに対する、さも当然だと言わんばかりの表情。
「そういうの、初めてなんだ?」
気息奄々のアオイは視線を逸らせ、息を弾ませながらも僅かに頷く。
その目尻に浮かんだ涙が、今にも零れ落ちそうな少女。
だが、涙の理由は少女自身にも分からなかった。
残りの一人、ミドリの顔に浮かんだ表情は複雑であった。
悔恨の想い。
あの日・・・。
公園で男達に蹂躙され、辱しめられる友人を助けることも出来ず、逃げ出そうとしたばかりか、全身に欲望を浴びせかけられる姿に昂ぶり、至高の自慰に耽った負い目。
或いは、あの日あの場で少女が友人を助ける為の行動を起こしていれば、事態は大きく変わっていたのかもしれなかった。
羨望の想い。
何も知らず何も出来ず、ただ身の裡に沸る肉欲を持て余していた友人が、異常なシチュエーションとはいえ、想像を遥かに超えるような肉の悦びに溺れている。
少女自身には今、友人がしている行為に踏み切る勇気は無い、いや、公衆道徳的な観念から考えれば、踏み切ってはならない行為であろう。
その部分を割り引いたとしても、その勇気は無く、無意識のうちとはいえ、行為に踏み切ることが出来た友人が羨ましかった。
侮蔑の想い。
何故かは分からぬが、男の破廉恥な指示に従ってしまった友人。
隣にいた自分が見守る中、公共の場で下着を脱ぎ、そのままの姿を晒しながら街中を歩くとは。
そういう意味では、電車に乗っている間に触れることなく果ててしまった自分も似たり寄ったりなのだが、一旦は棚上げだ。
はしたない。
女性としての節度、嗜みに欠ける行為に至る友人に対し、少女は少なからぬ蔑みの念を抱いていた。
※元投稿はこちら >>