「左手を下ろしてごらん。」
男は穏やかな口調でアオイに告げる。
収拾のつかない状態、そうとしか表現出来ない少女の下半身。
では上半身はどうかと問えば、五十歩百歩の状態だと言わざるを得ない。
外見上の問題ではない。
その肉の裡側である。
腕を下ろせない。
下ろしたら淫らな想いに駆られていることが分かってしまう。
腕を下ろしたい。
下ろして淫らな想いに駆られている徴を見て欲しい。
いずれにせよ、昂ぶりにより汗ばんだブラウスしか身に付けていない以上、尖がった乳首は透けているに違いない。
葛藤する少女。
はしたなく股間を汚し、卑猥な匂いを振りまいてはいても、確固たる証拠を男が眼にしたわけではない。
透けて見える程の欺瞞ではあるが、辛うじて少女のプライドは保たれる可能性がある。
何を今更だ。
恥知らずにも、見知らぬ男の指示に従い、見られながら下着を脱いだのだ。
今の自分が、どんな状態になっているか。
眼の前にいる男に分からないわけがない。
いや、この状態に至ることが分かっているからこその指示だっのだ。
狂ってしまえ。
狂ってしまいたい。
いや、既に狂っているのかもしれない。
いやいや、本当はそれも少し違う。
狂う寸前の今の状態が望みなのだ。
心行くまで愉しみたいのだ。
存分に味わいたいのだ。
葛藤の最中、自分なりの結論すら出ないままにアオイは左手を下ろしていた。
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