その四十代の男に声を掛けた理由が最後まで、いや、今に至ってもミドリには分からなかった。
平凡な会社員にしか見えず、何ら特徴の無い知的に見えなくもない痩せ気味の男。
強いて理由を挙げるのであれば、その眼なのかもしれなかった。
透明な液体の中に浮かんだ氷塊のような眼、ただしその液体は純度の高いアルコールのような揮発性と発火の可能性を秘めているように見え、そしてそこに浮かぶ氷塊も、その成分は水ではない不安定な物質。
そんな眼に惹かれたとしか言いようが無かった。
「オジサン、ちょっとだけ話していい?」
いつも通りの『商談』を始めるミドリ。
黙って後ろに立つアオイ。
『商談』が進むうち、男の眼に好奇の光が溜まり始める。
いつもの男達とは違う。
だが何が違うのかが分からない。
少なくとも男は好色な眼をしていなかった。
そして気が付けば、二人の少女はその男に逆らうことが出来なくなっていた。
ふらふらと男に導かれるまま、駐車場の片隅に移動した二人と一人。
男は前払いのつもりなのか、一枚の一万円札を差し出した。
「今、スカートの下には何を穿いているんだい?」
学校指定の制服、、ブラウスとスカートの上にブレザー、、を身に付けた二人の少女、そのうちの一人、、アオイに問い掛ける男。
少女はスカートの中、下着の上にハーフパンツを重ねて穿いていることを途切れがちに告げる。
「ハーフパンツだけ脱いで、その子に渡してごらん。」
反駁することもなく、スカートの下に手を潜り込ませ、ハーフパンツを脱ぐアオイ。
呆気にとられ、立ち尽くすミドリ。
アオイにしても、何故、指示に従ったのかが分からない。
屋外、しかも異性の見守る中で衣服を脱ぎ去る行為は普通では出来ない。
だが、何故か魅入られたように脱いだハーフパンツをその子、、ミドリに手渡す少女。
「よく出来たね・・。次は穿いている下着を脱いでその子に渡しなさい。」
流石に躊躇うアオイ。
周囲にキョロキョロと視線を彷徨わせ、助けを求めるかのように友人を振り返る。
だが、結局は指示に従い、脱いだ下着をミドリに差し出す少女。
満足そうな笑みを浮かべた男は場所を変える旨を告げ、先頭に立って歩き始める。
二人の少女が指示に逆らうことなぞ、微塵も考えていないかのような態度。
事実、少女達は易々諾々と男の指示に従って行動していた。
晩秋の空気に下腹部を撫でられながら、心細いことこの上ないアオイ。
スカートの下に何も穿かず往来を歩いた経験なぞ、あるわけもない。
しかも、初対面の男の指示により、だ。
スカートの下、剥き出しの下腹部を冷たい空気に嬲られる少女は、はしたない格好をしている自覚に責め苛まれていた。
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