「ね、ちょっと待って!お願い!」
必死に喰い下がるアオイを尻目に、帰り支度を進めるミドリ。
幾らかの憐憫の情はあるが、構ってはいられないのが実情だ。
事情を知らぬ人間が眼にすれば、痴情の縺れに起因した別れ話かと思うかもしれないが、あながち間違いでもない。
真っ平であった。
既に問題は同性との淫らな行為云々ではなく、、むしろ、それ自体には心惹かれるのも事実である。
問題なのは、無邪気、無頓着、無神経なアオイの言動であった。
時を選ばず物理的にその距離を縮め、他人の視線に頓着することなく躯に触れてくる少女。
密かに囁かれる級友達の陰口と好奇の視線にミドリは耐えられない。
・・いつも一緒だよね・・。
・・レズ・・なのかな・・。
現時点では噂の域を出てはいない。
だが、噂ではなく事実なのだ。
しかも最悪なことに『同性における恋愛関係』ではないのだ。
アオイは、いざ知らず、少なくともミドリにとっては『同性における肉体関係』に過ぎない。
取り縋るアオイ。
正に『痴情の縺れ』に端を発した痴話喧嘩にしか見えない。
※元投稿はこちら >>