「ね。ミドリがお手本、見せてよ。」
「え?」
自慰に耽る姿を他人に見られる、いや、見せる。
考えられなかった。
黙り込む少女に業を煮やしたかのようにアオイは新たな案を提示する。
「じゃ、この間みたいにシテくれる?」
自慰に耽る姿を見られることに較べれば、遥かにマシである。
だが、少女の胸の内には、或る想いが唐突に頭をもたげていた。
不公平ではないか。
一方的な奉仕を捧げるだけのミドリと、その奉仕を享受するだけのアオイ。
この時点では当初、抱いていた同性愛的な行為への忌避感は、消え去ってこそいないものの、その姿を潜めていた。
妬みと憧れで頭の中を占められたミドリは、思わず口に出してしまう。
「・・アオイが・・シテくれたら・・。」
咽喉がカラカラだ。
言葉を切ったミドリは唾を呑み込むと、、その音は無闇に大きいような気がした、、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「アオイが・・先に・・あたしにしてくれたら、してあげる・・。」
言ってしまった。
後悔の念に押し潰されそうな少女。
取り消したかった。
だが、既に時遅し。
「・・分かった。いいよ。」
屈託無く言い放つとアオイは姿を消す。
絶望と興奮が綯い交ぜになったミドリの胸中は複雑であった。
一人、座ったまま所在の無い少女の耳に、階段を登るアオイの足音が届く。
再び姿を現した少女は、大小、何枚かのタオルを手にしている。
訝しむようなミドリの表情に気付いたアオイが悪戯っぽい笑みを浮かべながら告げた。
「汚しちゃうと面倒だから・・。」
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