「・・おな・・・に・・ぃ?」
自慰の経験の有無を問われたアオイは、キョトンとした表情を浮かべる。
其れは何ぞや?
そういうミドリはした経験があるのか?
「・・あ、ある・・。」
思わぬ反撃に対して反射的にマトモな返答をしてしまった少女の頬は赤く染まる。
自慰の経験があることを他人に話した経験は無い、いや、十三歳の女子中学生が己れの自慰を語ることは、まず有り得ないであろう。
・・言っちゃった・・。
躯が熱くなり、動悸が早まる。
だが、ミドリの動揺を余所に更なる質問を、、しかも更にセンシティブな内容で、、重ねてくるアオイ。
「・・今もしてる・・の?」
「・・・・うん。」
消え入りそうな声は、辛うじて聞き取ることが可能な囁きに過ぎなかった。
「・・毎日・・するもの・・なの?」
「ま、毎日なんてシテないよっ!」
思わず声を上げてしまったが、幸いにして声の届きそうな範囲に人影は見当たらない。
狼狽えるミドリとは対照的に、天真爛漫と評しても良いような表情を浮かべて追加の回答を待つアオイ。
毎日でなければ、その頻度は?
「・・週に・・一回か・・二回くらい。」
嘘であった。
ミドリの自慰は週に三回か四回に及び、場合によっては一日に二回する日もあったが、それを明かすことは流石に出来ない。
「じゃあさ・・」
ミドリは毎週一回か二回は・・
・・気持ち良くなりたくて・・
おなにぃ、シテるってこと・・?
最早、ミドリは頷くことしか出来ない。
泣きそうであった。
自慰の経験、その頻度を告白し、更には自ら肉の悦びを欲した挙句、その欲望に負けてハシタない行為に耽っていると告白せざるを得ないのだ。
「ミドリだけ・・なのかな?」
「え?」
「んー。皆んなもシテるのかなって。」
「・・シテる子もいるだろうし・・シタことない子もいるだろうし・・。」
現にアオイは経験が無く、その内容や単語すら知らなかったではないか。
ミドリとて、その実情なぞ分からない、分かるわけがなかった。
ある統計によれば、一般的に女子中学生の半数近くが自慰の経験があり、初めて自慰をした平均年齢では十四歳程度とある。
だが、調査方法、調査対象の母集団により、その調査結果及びその精度は変わってくる。
ざっくりとした話ではあるが、小学生の頃から自慰に耽っていたミドリは、やや早熟と言えよう。
そしてその事実は彼女にとって、密かな心配事であり罪悪感の根源であったのだ。
自分はおかしいのではないか。
小学生の頃から自慰に耽るなんて。
我慢しようとはしている。
だが、結局は我慢しきれない。
そして少女は問われるが儘、己れの秘密を口にしてしまったのだ。
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