学校生活に復帰した頃から、露骨なまでにアオイはミドリに付き纏うようになっていく。
事件直後、そして数日後の二度に渡る『吊り橋効果』によるものであった。
少女はミドリに対して全幅の信頼を寄せ、全てを捧げていた。
アオイの全てはミドリの為であり、ミドリの傍らに居続ける為であったが、それはまるで聖職者とその教徒、、時には殉教者、、のような関係性。
その一方でアオイは、密かにミドリとの性的な意味における肉体関係を望む。
あの日、ミドリが施した『儀式』により目覚めたアオイの裡に潜む肉の悦び。
だが、あの悦びを再現する方法が分からないのでは如何ともし難い。
夏休みまで残すところ数日、二人の少女が連れ立って帰宅の途を辿っている時のことであった。
他愛の無い雑談が途切れた次の瞬間、二人の間にポッカリと沈黙が生じる。
「あ、あの・・ね・・」
意を決してセンシティブな話題に触れたアオイは、頬を染め、されどミドリに真剣な眼差しを注ぎながら言葉を紡ぐ。
あの日、施してくれた『儀式』を再び施してもらえないであろうか。
訝しげな表情を浮かべたミドリは理由を問う。
「だって、もう大丈夫・・なんでしょ?」
「・・・・・。」
言葉に詰まる少女。
確かに食事は普通に摂れているし、躯の穢れが拭えないという強迫観念も払拭されている。
全ては眼の前に立っている少女のお陰なのだ。
これ以上を望むことは出来ない。
だが、あの日、アオイの躯から滲み出した快感、それを再び味わいたいのだ。
その破廉恥な想いを口にする少女が浮かべる表情は、真剣そのものであった。
戸惑いを隠せないミドリ。
そうと気付かず施してしまった同性、かつ友人への淫らな儀式。
思春期の少女特有の潔癖さが、ミドリの罪悪感を再び煽る。
あれ一度きり、しかも本来の趣旨はまるで異なるのだが、結果的に少女の救済は成功したのだから。
そう自分に言い聞かせることにより、忘れようとしていた、、いや、忘れたい出来事。
言ってしまったアオイと言われてしまったミドリは、道端で対峙する。
ミドリは考える。
アオイが『あの悦びを再現する方法が分からない。』のであれば、『再現する方法』を教えてあげれば良いのではないか。
気は進まないが妥協案としてなら、まぁまぁの案だと考えたのだ。
その時は、ではあったが。
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