電車に乗って幾つか先の駅で降りた二人は、その駅からギリギリ徒歩圏内に位置する繁華街に足を運ぶ。
敢えて不便な、自分達の生活圏内から外れた寂れかけの繁華街。
幼い、或いは稚拙ながらも、二人の少女が知恵を絞った結果、互いの知り合いに出会う可能性を最小限に留める為の配慮であった。
繁華街に近い、だが、繁華街からは微妙に外れた位置で二人は、何方からともなく足を止める。
友人の誰かとの待ち合わせを装い、ヒソヒソと行き交う男達の品定めに勤しむ少女達。
『品定め』と言っても確固たる基準がある訳ではない。
基準は曖昧だが、消去法の結果に従う以外の方法は無い。
「・・アレは・・?」
どちらからともなく呟いていた。
二人が視線の先に捉えているのは、数メートル先を繁華街に向かって歩く三十路絡みの男。
ジャケットは羽織っているが、普通の勤め人には見えず、かと言って暴力の匂いはせず、不潔な印象も与えない。
だが、その男を二人は『アレ』と呼ぶ。
二人にとって男は『アレ』、、男性器を備えた存在でしかない。
「・・うん。いいよ・・。」
最終決定は、実働部隊であるアオイが下すのが常であった。
「・・じゃあ行って来る・・ね。」
ビジネスライク、そう言っても過言ではない表情、そして口調で呟くと、ミドリは足早に『アレ』、、男を早足で追いかけ始める。
十メートル先を歩く男に追い付き、やや呼吸を乱しながら横に並んだ少女。
怪訝そうな表情を浮かべ、足を止めた男。
息を整えたミドリは、最後の品定めをしながら『商談』を開始した。
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