ミドリの成した行為、それはキス、接吻と称されるものと似ているが、その目的が異なる。
愛情を示す、情欲を交わすのではなく、証明する為の行為であった。
何を証明するのか。
決してアオイの躯が穢れてしまったわけではないことを。
少なくともミドリの認識においては、だ。
そしてアオイは便器などではないことを。
眼を見開いたまま躯を硬直させたアオイの唇を、ゆっくりと慎重にミドリの舌が這っていく。
下唇を端から端へ。
折り返すように上唇を端から端へ。
往復を終えたミドリの舌が、アオイの口の中に侵入を始めた。
上唇の裏側を端から端まで舐め終えると、次は上顎の歯茎を端から端までだ。
下唇の裏側と下顎の歯茎も同じように舌を這わせていく。
それが終われば次は舌だ。
温かく濡れたミドリの舌、その先端がアオイの舌を探り当てる。
まるで生温かい肉に舌を絡めながら、それを味わっているかのようにミドリの舌が蠢く。
自然、アオイの口の中に湧いた唾液が侵入してきた舌にも絡んでいく。
べちょ
くちゃ
ぶちゅ
時折、二人の口元から生じる湿った音。
仔細を知らず、その光景だけを切り取れば、二人の少女が手探り状態の同性愛に耽っているようにしか見えない。
だが、この時点で二人に淫らな気持ちは微塵も存在しない。
アオイは友人に対する驚嘆と感謝の念。
ミドリは友人の清浄を証明しようとする一念。
ただ、それだけであった。
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