再び姿を現したミドリ、その表情から何らかの感情が読み取ることは出来ない、
・・助けて欲しかったのに・・。
何故、先刻は姿を消したのか。
・・放っておいて欲しかったのに・・。
何故、再び姿を現したのか。
相変わらず矛盾した葛藤に翻弄されるアオイの想いを歯牙にもかけず、ミドリは距離を詰めてくる。
この段階でアオイにとって自分以外の人間は全て敵である。
出来ることは無言で躯を縮めることだけだ。
だが、或るタイミングで世界は、その価値観は転じていた。
少なくともアオイにとっては、だ。
アオイとの距離を限りなくゼロにしたミドリは、その場でしゃがみ込むと、無言のまま手にしたタオルで少女の素肌に付着した穢れを拭い始める。
背中を、肩を、尻を。
濡らしたタオルを厳つく絞ったと思しきヒンヤリとした感触が、アオイの心を解き解ぐしていく。
「待ってて・・。」
そう言って立ち上がったミドリは再び姿を消した。
恐らくはタオルを濯いできたのだろう。
三たび姿を現したミドリは、やはり無言のまま、アオイの躯を、、今度は顔を、胸元を、、拭い続ける。
「・・アレだったんだ・・。」
そう呟いた少女は経血に汚れたもう一人の少女の下腹部から股間、太腿までをタオルで拭う。
ひと通りアオイの躯を拭き浄めると、立ち上がったミドリは、其処彼処に放置されていた衣類を拾い集め、体操服、下着に分けて畳み始めた。
「・・はい。」
そう言って差し出される畳まれた衣類は、洗濯すらされていなかったが、アオイにとっては浄められたに等しい価値がある。
ここに至り、初めて少女はポロポロと大粒の涙を零し始めていた。
ミドリの介添えに助けられつつ、、生理の処置も含めて、、アオイは泣きながら身繕いを始めていく。
期せずしてアオイは、この日、二度目の『吊り橋効果』に嵌っていた。
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