「あっ……穂乃花ちゃん、おはよう!」
笑顔で挨拶をすると穂乃花は照れた顔を浮かべ、
「お兄ちゃん…おはようございます。朝からごめんなさい。少しお話いいですか?」
と言って返事を返してくる。やはり何か話したいようだ。僕は優菜に、穂乃花ちゃんが僕に何か話したいそうだから暫くさとる君とサッカーしててくれるようにお願いすると少し不満そうな顔をする。
僕は優菜の耳元で、
「多分昨日話した事の続きだと思うから。優菜、穂乃花お姉ちゃんの気持ち考えてあげて。話を聞いてもらえる人が他に誰もいないんだと思う。穂乃花ちゃんの昨日の話は絶対秘密だよ。ほら…さとる君と遊んでおいで。」
穂乃花は申し訳なさそうな顔で優菜にお願いする。
「少しだけお兄ちゃん貸して。お願い」
「うん。わかった。」
優菜は納得した様子でさとる君とサッカーを始める。
僕は少し離れたベンチに腰かけると、穂乃花が一人分の隙間をあけベンチに腰かける。やはり隣に座るにはまだ抵抗があるようだ。優菜の手前、ちょうどよい距離感だ。
昨日は浴衣だったし、少し薄暗かったからよく見えなかったが、ショートパンツから伸びるすらっと伸びた色白の細い足……Tシャツからツンと突き出た小さな胸。ううっ…ドキドキしてくる。
僕は黙っていると穂乃花はゆっくり口を開き指を指す。
「あの……私の家あそこなんです。優菜ちゃんの家と近くて。2階の自分の部屋から公園を見たら優菜ちゃんとお兄さんがいたから、慌てて出てきたんです。」
おっ……これは偶然じゃなかった。僕の姿を見てわざわざ自分から会いに来たという事か。
「そうなんだ……わざわざ会いに来てくれて嬉しいよ。
優菜ちゃんの家と近いと聞いてたから、公園で遊んでいればもしかして穂乃花ちゃんに会えるかもって僕も思ってた。」
びっくりするも、一瞬嬉しそうな表情を浮かべた顔を僕は見逃さなかった。
「お兄さんも私に会いたいって思ってたの?」
お兄さんもという事は、穂乃花も会いたかったんだ。
「思ってた。お祭りで話した穂乃花ちゃんの悩みが気になってたし……話も中途半端に終わってしまったからね。」
僕の言葉に少しがっかりした顔をする穂乃花。単純に自分の悩みが気になって会いたかったと言われたように聞こえたんだろう。体は優菜やひなより随分大人に近づいているようだが、やはり心は繊細な6年生。
少し心を揺さぶってみるか。
「穂乃花ちゃん、話したい事は昨日話した続きだね?」
穂乃花は下を向き、
「はい……。お兄さんに優菜ちゃんの方が魅力的だって言われた事が心に残ってて。みんな私の体触りたいって思ってる…それは私が魅力的だからって自惚れてた。痴漢に会った時から……そう思うようになってしまったみたい。痴漢に触られて止めないでって思った自分が許せなくて…。男の人を不潔だって知らない間にそう思い込んでた。」
僕は何気に体を穂乃花に近付け距離を詰める。穂乃花の手に優しく触れるとビクッと震え僕を見る。
「よく触らないで!って昨日みたいに言わなかったね。昨日のヒント……慣れる事。男の手が汚いものじゃないと理解出来るようになる為に触れてみたんだ。嫌だったら止めるよ。」
穂乃花の手が震えているのがわかる。穂乃花は顔を左右に振り、
「大丈夫………」
と言う。昨日より少し前に進んだ。でもまだまだ…。
「自分の事を客観的に見て、自分の気持ちを正直に話してくれる穂乃花ちゃんは、魅力的な女の子だよ。」
「今の私魅力的?お兄さんからそう見えるの?」
僕は穂乃花の手を優しく握り、
「もちろん見えるよ。」
手を握られどうしていいのかわからない顔をするも、
嫌とは言わない穂乃花。顔を真っ赤に染めている。
「穂乃花ちゃん…誰も相談出来ずに自分一人で悩んでたんだね。周りの人は穂乃花ちゃんの本当の姿を知らないだけ。少しばかり自惚れてたけどそれも仕方ないと思う。問題は男性を不潔だと思ってしまった事。男性不信になると生来困る事になるからね。でも本当に男性を不潔だと思ってるかどうか……。だって痴漢に会った時、変な気分になって止めないでって思ったんでしょ?内心では触って欲しいって思ってる。ただきっかけがないだけ。違う?自分に正直になってみようよ。」
穂乃花ははっとした顔をする。
「……………私が触って欲しいって思ってる?」
考えて込む穂乃花。ここは賭けに出て見るか。
「穂乃花ちゃん…夜寝るとき痴漢された事思い出すでしょ?思い出すとドキドキしてどうしていいかわからないまま、自分の大事なところ触れてみたりしていない?自分で触れて罪悪感を感じてしまう。違う?」
顔を真っ赤に染め上げる穂乃花。ん!……図星か。
「そんな事しない……するわけないもん。」
立ち上がろうとする穂乃花の手をギュッと掴み遮る。
僕は少し強い口調で、
「穂乃花…自分に正直になりなさい。正直にならないといつまでもこのままだよ。穂乃花だけじゃない…穂乃花の年頃になれば女の子はだいたい無意識にしてしまうんだ。何も恥ずかしい事じゃない!」
穂乃花は僕の強い口調にびっくりしそのままベンチに座る。恥ずかしそうに僕を見て、
「穂乃花ぐらいの女の子はみんなするの?」
おっ…やっと自分の心の奥底を見せる気になったか。
「そう…思春期になると誰もが経験する事。だから穂乃花も例外じゃない。ただきっかけが痴漢だっただけと言う事。」
穂乃花は下を見向き恥ずかしそうに、
「お兄さんの言うとおり……。自分の心や行動が見透かされているみたいで正直に言えなかったの。ごめんなさい。自分だけ…自分だけがそうなんだって思うと罪悪感が襲ってくるの。」
僕を見上げた目には涙が浮かんでいる。ううっ…泣かせてしまったか。涙ぐむ穂乃花の表情……可愛いぞ。
「罪悪感なんて感じる必要なんてないの。自分だけが特別じゃない……みんなと一緒。」
穂乃花は少女モデルのような可愛さがある。他の子とはレベルが違うほど6年生にしては大人びて綺麗だ。だが心はみんなと一緒。色んな意味でみんなとなんらかわりない事を理解させる。
「お兄さんと話してなんだか心がすっきりした感じがする。何で悩んでたんだろうって。」
心の奥底を見せてくれた穂乃花…あともう少し。後もう少し心の奥底を……。
「穂乃花ちゃん…違ってたらごめん。昨日の夜も触ったんじゃないのかな?僕の事想像して…僕に触られている事を想像したんじゃないのかな?」
ますます顔を真っ赤に染める穂乃花。
「………………」
黙ったまま暫く沈黙が走る。
「自分に正直になる事。自分に正直になれぱ楽になるよ。」
穂乃花はちらっと僕の目をみてコクンとうなずく。
おおっ…僕の事を思ってのオナニーか。これは興奮する。無意識なのかどうなのか……。
僕は穂乃花の頭をくしゃくしゃっと撫で、
「僕の事を思ってしてくれたなんて嬉しいよ。ありがとうね。僕も穂乃花ちゃんの事ずっと考えた。」
「お兄さんも私の事思ってくれてたの?」
嬉しそうな顔をする穂乃花。
「そうだよ。でも自分一人じゃどうしていいのかわからないよね?僕だったら穂乃花の想像してる以上の事してあげられる。気持ちいい事をね。」
穂乃花の目が興味のある目に変わっていくのがわかる。
「……………教えてほしい。」
おっ……やっと自分に正直になれたか。
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